面接・小論文のポイント

1、自己PRカードの書き方

(1)自己PRカードとは何か

 自己PRカードは、志望理由の他に中学校で取り組んできた学習や様々な活動から得たことなど、志望校に最も伝えたいことを記入して提出するものです。
 自己PRカードを点数化することはありませんが、面接資料や合格判定資料の一部として活用したり、学校生活に対する意欲などを確認する資料として用いられます。

①志望理由について
 「本校の期待する生徒の姿」(都立高校であれば9月中旬に発表)、学校説明会、学校案内・パンフレットなどを参考にして、各学校の特色を理解した上で志望理由につなげることが重要です。

②中学校生活の中で得たことについて
 総合的な学習の時間などで学んだこと、学校行事・生徒会活動・部活動・ボランティア活動などで得たもの、資格・検定などを具体的に挙げ、それらを今後の高校生活にどう活かしていきたいかというところまで考えを進めましょう。

③高等学校卒業後の進路について
 将来の夢や目標、将来なりたい職業、その職業に就きたい理由、その職業に就くことができるように努力していることなど、高校卒業後の進路について具体的に記入しましょう。方向性が明確であればあるほど、高校生活への意欲が強いと見なされ、好印象を与えることになります。


(2)面接とは何か

 学力は内申書や学力試験などで見ることができますが、ある人物の人間性や中身を知りたければ、「何か質問をぶつけてしゃべらせる」「何かテーマを与えて書かせる」という2つの方法が最も手っ取り早いことになります。したがって、「しゃべれば面接、書けば論文」ということになり、「自己の内面」(考え、志、意欲、展望、ビジョンなど)を何らかの形で表現する技術、相手(試験官・採点者)がそれをどう見るかという視点、が必要になります。
面接はプレゼンテーションであり、商品は「自分自身」です。まず、自分の商品価値、市場価値をしっかり見極めることが必要であり、どこで人と差別化できるのか、自己分析を掘り下げた分だけ、相手に伝わるものがあると考えて下さい。


(3)小論文とは何か

 作文と小論文の違いは客観的評価の対象になり得るかというところにあります。自分の考えや体験を自由に書くだけなら作文であり、思想・信教の自由がある以上、それをいいとか悪いとか言えない面があります。もちろん、文章のうまい、下手はあります。しかし、小論文の場合、自分の考えには根拠がなければならず、その根拠にも客観的妥当性がなければなりません。受験案内に作文と書かれていても、評価の対象にする以上は小論文ということになります。


2、面接のポイント

(1)面接の形式

①個別面接
 面接官が複数名(場合によっては1名)に対して、受験生が1人ずつ面接を受ける形式です。受験生をいろいろな角度から掘り下げることができる基本形式なので、実際に受けるのが集団面接であれ、集団討論であれ、個別面接の練習をきちんとして、「面接の基本」をマスターしておく必要があります。勉強面は自学自習でも伸ばすことがいくらでもできますが、面接は自分なりにいくらやっても限界があり、「きちんと見ることができる人」に見てもらわない限り、評価レベルには達しないことがほとんどです。

②集団面接
 面接官が複数名に対して、受験生も複数名が同時に面接を受ける形式です。比較対照されるので、自分の答えのみならず、他の人の答えにも注意を払わなければなりません。また、「デリケートな問題にはデリケートに対処する」という原則があるので、いじめなどの人権がからむ問題でうっかりした答え(例えば、「いじめられる側にも問題があると思います」など)をすると、それを踏み台にされてしまうことがありますので、注意が必要です。

③集団討論
 テーマを与えられ、集団で討論し、最後に代表が結論を発表する形式で、そのプロセスを複数の面接官が観察・評価する形式です。高校受験の場合、テーマは学校生活に関わるものが多いと言えます。リーダーになった方が有利かと言えば必ずしもそうではありません。リーダーがどんどん意見を出して、議論を引っ張ればいいというものでもなく、リーダーはむしろ全員の発言を促し、議論が横道に逸れそうなら軌道修正し、活発な議論の結果、全員が納得できるような結論に持っていく必要があるからです。一般社会では「議長は何もしゃべらないのにうまくいく」のが理想形です。要は、リーダーであれ、メンバーであれ、自分のポジション(立ち位置とやるべきこと)がしっかり分かっていて、全体目的達成のためにどれだけ貢献できているか、ということが重要なのです。この観点から、協調性、積極性、貢献度、思考力などが観察・評価されるわけです。


(2)面接のマナー

①入室から着席まで
一般的には「面接はイスに座るまでに8割方決まる」と言われ、第一印象が大きな比重を占めます。「笑顔」「元気な声」「きびきびした動作」は基本中の基本です。
 まず、面接会場・面接空間という2つの空間に出入りするので、その2ヶ所でマナーがあります。面接会場であれば「失礼します/失礼しました」、面接空間であれば「よろしくお願いいたします/ありがとうございました」という挨拶になります。
 ドアノックは3回(国際マナーでは3回以上と定められています)が原則です。2回はトイレのノックです。「失礼します」と元気な声で挨拶して入室し、ドアノブを閉める時は後ろ手で閉めないように気をつけます。面接官に背中を向けてもかまいません。要は、「一時一事の原則」(一つの時に一つの事をする、「ながら」をしない)が重要なので、挨拶するなら一生懸命挨拶する、ドアを閉めるなら一生懸命ドアを閉める、お辞儀をするなら一生懸命お辞儀をするということです。
 両手は男性の場合、両側でまっすぐに伸ばし、女性は前で軽く組むのが基本になります。お辞儀は斜め45度(通常のお辞儀は斜め30度)を基本とします。
面接官の指示に従い、指示した面接官の方に向かって、「受験番号」「出身中学校」「氏名」をはきはきと答え、「よろしくお願いいたします」と挨拶します。「それでは、ご着席下さい」という指示が出されてから着席となります。

②質疑応答
 何を質問されても、まず「はい!」と元気よく答えてから、解答することが基本です。即答しづらい質問の場合も、まず「はい!」と答えてから、「少々お待ち下さい」と言ってしばし考える時間を取り、それから解答することも認められます。また、途中でずれたと思った場合、「申し訳ありません。もう一度やり直してもよろしいですか?」と一言断って、解答し直すことも許容範囲です。
 気をつけなければならないのが目線です。キョロキョロ目が泳ぐのが一番印象が良くありません。面接官の大体目の辺りをじっと見て、解答するのがベストです。
 基本的にはプラス・アピールをする場なので、マイナス・アピールをしないように気をつけましょう。典型的な質問は「あなたの長所・短所を教えて下さい」というものですが、長所はともかく、短所を正直に「根気が続かないことです」「意志が弱いところです」「飽きっぽいことです」「優柔不断なことです」などと言ってはいけません。自分の全てを正確に理解してもらう必要はなく、自分のいい面だけを正確に理解してもらえればいいのです。例えば、「いろいろなことに興味・関心があってあれこれ手を出してしまうのが私の短所ですが、最近ではそれに気をつけていて、1つのことにじっくり取り組んでいくことを意識しています」「いろいろな人の意見を聞く中で決断が遅れがちなことが私の短所ですが、今では決断して行動することの方に重きを置くようにしています」などと、マイナス面をプラスに切り替えて言うように心がけましょう。

③終了から退室まで
 「以上で終わりです」と言われたら、「ありがとうございました」と一礼して、面接空間から離れ、「失礼いたします」と言って、面接会場から出ます。


(3)面接でよく聞かれる質問

①志望理由
 「なぜこの学校を志望したのですか」という質問が、面接における質問の中核になります。ホームページなどで、高校の特徴・ウリを押さえ、「それを買った!」という立場にする必要があります。英語教育に力を入れている、文武両道に特徴がある、スーパーサイエンススクールに選ばれている、など、高校として「ここを一番見て欲しい」というポイントがあるわけですから、それを踏まえていないのは面接におけるキャッチボールが成立していないことになります。実際には「学力的にこの辺だから」「家から近いから」「すべり止めだから」「友達が行くから」という理由であったとしても、あるいは女子であれば「制服がかわいいから」「建物がきれいだから」というのが本音であったとしても、ここは「大人の対応」が必要です。
 そして、④将来の夢、③高校に入ったらやりたいこと、とも関係してきますが、この学校志望理由に自分としてのニーズ、目的、方向性を関連づけることで、「動機の強さ」を示すことになります。動機が明確で強い生徒ほど、高校に入ってからの頑張りが期待されるので、高校としての印象は良くなります。

②中学校生活で力を入れてきたこと
 運動部であれ、文化部であれ、生徒会活動であれ、学校行事であれ、ボランティア活動であれ、「何をやってきたか」ということもさることながら、それ以上に「それによって何を得たか」「それが今後、どのように活かされると考えているか」ということをはっきり言えることが重要です。
「何をやってきたか」ということについても、都大会ベスト8ですとか、文化祭の英語劇で400人ぐらいの観客を動員し、満員御礼になりましたとか、1ヶ月近く朝練・昼連・夕連を続けて合唱コンクールで見事、全校1位になることができましたとか、目に見える「実績」があれば必ずそれを伝えることです。人を惹きつけるトーク術には「データ・トーク」「コンセプト・トーク」「セルフ・トーク」「ケース・トーク」の4つの要素がありますが、「実績」は「データ・トーク」に属します。

③高校に入ったらやりたいこと
 中学校生活で力を入れてきたことにつながりやすい内容ですが、部活で有名な高校であっても、高校生の本分はやはり勉強することですから、勉強面でまずやりたいことを述べるべきです。「勉強にも打ち込んで、国公立大学か私立上位校を目指します」ぐらいでもかまいません。「勉強と部活を両立させて」「文武両道で」ならもっといいでしょうし、「勉強であれ、部活であれ、学校行事であれ、何であっても真剣に打ち込んでいきたいと思います」でもいいでしょう。
 これが具体的であればあるほど、決意が伝わりやすくなるのですが、気をつけなければならないことは、「それなら別にうちじゃなくてもいいじゃない」と思われないことです。例えば、中学時代に真剣に打ち込んだものが水泳部であったとして、「バタ足を極めるために毎日何時間も練習しました。これで私は本当に自信がつきました。高校に入ってからも水泳を続けていきたいと思います」と言ったとしたら、「じゃ、水泳部の強い高校に行けば?うちは別に水泳部は強くないよ」となりかねません。スポーツ推薦ならまだしも、自分の本当にやりたいことが留学だったり、外交官になることだったりしたら、この水泳の話をしたのは何の意味があるの?となります。それだったら、「自分は外交官になりたいんです!そのために大学では留学して英語とフランス語とスペイン語は最低マスターしたいと考えていますので、高校ではそのための土台を作る準備期間だと思って、勉強と部活に真剣に取り組もうと考えています!」と訴えた方がはるかに説得力があり、差別化できることでしょう。

④将来の夢
 漠然とではあっても、将来の夢は無いよりはあった方が説得力が増します。広告代理店に行きたいとか漠然と考えているのであれば、いろいろな知識と経験を蓄積する必要があるということに自然につながりますし、生命科学の研究をしたいということであれば、理数系科目を頑張ることに当然なってきます。医療・福祉の分野に関心があるとか、特定の職種が定まらなければ、興味・関心がある領域を述べればいいわけです。

⑤自分の長所・短所
 長所は自分で言えば鼻につく自慢になりますが、他人に言ってもらえれば「ティー・アップ」という心理学的効果が生まれます。「友達から何でも相談しやすいとよく言われます」などがティー・アップです。自分で自分のことを述べる場合でも、「自分の長所はやるとなったらとことんやる所です。バスケット部でミドルシュートをマスターするために、毎日200本のシュート練習をノルマにしていましたが、1年間1日も欠かさずに続けて、シュートが安定しました」というように「データ・トーク」で言うようにすれば、相手は具体的にイメージしやすくなります。
 これに対して、短所はマイナス・アピールにしないことがポイントです。相手に自分の全てを正確に分かってもらう必要は全くなく、「自分のプラス面だけを正確に分かってもらえればいい」のです。したがって、短所を言わなければならない場合でも、必ずプラスに切り替えて言うべきです。例えば、「自分の短所は思い込んだら突っ走ってしまう所ですので、最近ではこの点を自覚して、周囲の人の意見を踏まえた上で行動するように気をつけています」とか、「自分の短所は考えすぎる所なので、最近ではじっくり考えるだけ考えたら、断行することを心がけています」といった感じです。


3、小論文のポイント

(1)小論文の形式

①課題文・資料型
 課題文や資料を読ませて、それを踏まえた上で自分の意見・考えを問う形式です。前半は現代文の読解、後半が小論文と言っていいでしょう。大学受験なら「見方を少し変えるとこういう点も見えてくる」といった観点のズラシが必要ですが、高校受験の場合はオリジナリティーを強調するよりもオーソドックスにまとめる方が優先されます。
②テーマ型
 具体的・抽象的なテーマを与えて、それについて書かせるものです。テーマは「自然は曲線を創り、人間は直線を創る」(湯川秀樹)という文言だったり、「波」、「目」、「声」、「朝」などの一文字の課題であったり、「日本に来るのは初めてのアメリカ人中学生に、案内役としてあなたはどういう日本の文化について紹介しようと思いますか」といった状況設定質問であったりします。抽象的なテーマでも必ず具体的に論じることが必要で、仕える材料は経験・知識・考えの3つのみです。


(2)小論文の型

①字数
 400~600字が非常に多く見られる字数ですが、9割以上書く必要があります。8割を切ると採点対象外になる恐れがあります。

②文章表記上のルール
・段落最初は1マス開ける。
・主語-述語対応を正確に。
・語句対応を正確に。
・語尾統一を心がけること。
・誤字・脱字に気をつけること。
・漢字で書ける所は極力漢字で書くこと。
・漢数字は1マス使い、アラビア数字は1マスに2数字入れる。

③組み立て
「面接」であれば、「挨拶」(イントロダクション)→「質疑応答」(プレゼンテーション)→「挨拶」(クロージング)の3段階となるように、「小論文」なら「序論」(導入)→「本論」(具体例・論証)→「結論」(しめくくり)の3段階となります。 第一印象が重要なのはどちらも同じですから、導入部分では結論の先行提示で、読み手に分かりやすい展開を心がけましょう。「私はこのように考える。なぜなら~」といった感じです。
具体例・論証の本論部分が小論文の命ですが、だらだら字数を稼がないで、圧縮して中身を濃くすることが重要です。大学受験になれば600~800字のように字数が増えてくるので、この重要性はより顕著ですが、高校受験でも基本姿勢は変わりません。
しめくくりでは、さりげなく今後につながる抱負を入れることができれば、前向きな印象を最後に残すことができます。