理科力アップ講座

3 生物

1、植物の分類と構造

自然界の生物は互いに食う、食われるの関係(捕食と被食の関係)で鎖のようにつながっており、これを食物連鎖と言います。ここでは生産者として、まず光合成により無機物から有機物を作り出す緑色植物がいて、消費者として生産者が作り出した有機物を直接、または間接に食べて生きている動物がおり、動物も草食動物(1次消費者)、肉食動物(2次消費者、3次消費者)に分けられます。食物連鎖で食べられるものから順に個体数で表すと、ピラミッド形になり(個体数ピラミッド)、緑色植物(底辺)→草食動物→小形肉食動物→大形肉食動物(頂点)となります。さらに分解者として、菌類(カビ、キノコ等)、細菌類(乳酸菌、ナットウ菌等)といった落ち葉等の植物の死がい、動物の排出物・死がい等の有機物を無機物に分解する生物がいます。かくして、生物と環境を含めた生態系が形成されます。こうした全ての生物のエネルギー源は光合成によって取り入れられた太陽エネルギーです。
生態系において、大気中の二酸化炭素は光合成によって緑色植物が有機化合物とし、さらに食物連鎖を通して動物へと移動します。一方、生物は全て呼吸によって糖等を分解し、大気中に二酸化炭素を放出します。さらに動植物の遺がいは分解者によって分解され、二酸化炭素を放出します。このように炭素は化合物の形を変えながら、自然界を循環しており、これを炭素の循環と言います。また、環境汚染物質等が食物連鎖の上位の生物ほど濃縮されていく生物濃縮等も起こってきます。

ルーペの使い方:観察するものの細部を見る時はルーペなどを使います。ループは目に近づけて持ち、観察するものまたは体全体を前後に動かしてピントを合わせます。
顕微鏡の構造:見たいものの大きさの調節は接眼レンズと対物レンズの調節で行い、明るさの調節は反射鏡としぼりで行います。顕微鏡の視野では実物と上下左右が逆に見えます。
顕微鏡観察の順序:接眼レンズをはめます→対物レンズをはめます→反射鏡の調節→プレパラートをのせます→対物レンズとプレパラートを近づけます→離しながらピントを合わせます。なお、最初は低倍率で観察します(倍率=接眼レンズの倍率×対物レンズの倍率)。
プレパラートの作り方:スポイトでスライドガラスの上に水を1滴落とし、観察するものをのせます。柄付き針を使い、空気の泡を入れないように静かにカバーガラスをのせます。
花の構造:生殖器官である花は外側からがく、花弁(花びら)、おしべ、めしべからなりますが、イネ、ムギ等では花弁はありません。カボチャやキュウリではおしべ・めしべはどちらか一方しかなく、このような花を単性花と呼び、おしべしかない花を、めしべしかない花をと言います。それに対して、サクラやアブラナのように1つの花におしべ・めしべの両方がある花を両性花と呼びます。また、イチョウやソテツに至っては、1つの株(植物体)には雄花か雌花かどちらか一方の花しかできず、このような場合にはそれぞれ・と呼ばれます。
花粉の運搬:おしべで作られた花粉がめしべの柱頭につくことを受粉と言いますが、花粉を昆虫が運ぶものを虫媒花(アブラナ、ユリ等)、風が運ぶものを風媒花(マツ、スギ、ヒノキ、イチョウ、トウモロコシ等)、水が運ぶものを水媒花(クロモ等の水草)と言います。このうち風媒花のスギ花粉等が花粉症を引き起こしているわけですね。
種子のでき方:花粉がめしべの柱頭につくと、花粉管が伸び、子房の中の胚珠に達します。胚珠の中の卵細胞の核と花粉管の中の精細胞の核が合体して受精します。受精卵は細胞分裂を繰り返して胚となり、胚珠は種子となり、子房は果実となります。種子には、カキやイネのように種皮・胚・胚乳からなる有胚乳種子と、ナンキンマメやダイズ・クリのように種皮・胚・子葉からなる無胚乳種子があります。
種子植物:花が咲き、種子をつける植物のことです。特徴として、①種子で増える、②根・茎・葉の区別がある、③水分や栄養分の通り道である維管束が発達している、④葉緑体があるため、葉が緑色をしていて光合成をする、等が挙げられます。被子植物と裸子植物があります。
被子植物:胚珠が子房に包まれている植物のことです。子葉が2枚である双子葉類と1枚である単子葉類(イネ、トウモロコシ、ムギ、タマネギ、ツユクサ、ネギ、アヤメ、ユリ、ラン等)があります。
双子葉類:花びらがくっついている合弁花類(タンポポ、ツツジ、アサガオ、ナス、ヒマワリ等)と離れている離弁花類(サクラ、アブラナ、ナズナ、パンジー等)があります。
裸子植物:子房がなく、胚珠がむき出しになっている植物のことです。果実を作らず、種子のみ作ります。花もがくや花弁がなく、雄花と雌花に分かれていて、風媒花です。マツ、イチョウ、ソテツ、スギ、ヒノキ、モミ等。
種子を作らない植物:種子を作らず、胞子で増えます。シダ植物(ワラビ、ゼンマイ、ベニシダ、スギナ等)、コケ植物(ゼニゴケ、スギゴケ等)、藻類があり、光合成を行っています。
シダ植物:多くは日陰で生活していて、胞子のうで胞子を作り、胞子は発芽すると前葉体となって、そこで卵と精子が作られて受精します。ワラビ、ゼンマイ等の若い葉は食用にできます。また、古生代後期には高さ20m以上にもなるシダ植物の森林が発達し、これらの森林は今日世界各地で石炭となっていますので、なかなか役に立っているわけです。 コケ植物:多くは日陰の湿った所で生息しており、胞子から雄株・雌株が成長し、それぞれから精子・卵が作られて受精します。コケ植物は陸生植物で最初に出現したもので、植物が陸上に上がると水中の昆虫も上陸できるようになったのです。
藻類:水中生活をしていて、光合成を行う生物の総称で、色等から緑藻類(クロレラ、ミカヅキモ、アオミドロ、アオサ、アオノリ等)、褐藻類(コンブ、ワカメ、ヒジキ等)、紅藻類(アサクサノリ、テングサ等)、ケイ藻類(植物プランクトン)等に分類されます。
葉の構造:光合成と蒸散を行う葉は・・からなります。また、葉身が1枚からなるものを単葉(サクラ、ツバキ、カキ等)、2枚以上の小葉からなるものを複葉(バラ、トマト、トチノキ等)と言います。葉身にある筋は葉脈と呼ばれ、網の目状のものを網状脈(サクラ、ヒイラギ、タンポポ等)、平行になっているものを平行脈(イネ、トウモロコシ、ササ等)と言い、ふたまたに分かれて扇形に広がるものを(イチョウ等)と言います。葉の内部構造は表皮・・葉脈からなり、葉の裏の表皮に多数見られる気孔は2個の孔辺細胞からできていて、蒸散や気体の出入りが行われます。葉肉は葉緑体を多数含む細胞からなり、光合成が行われ、細胞が規則正しく並んでいるさく状組織、細胞間にすき間が発達してスポンジ状になっている海綿状組織に分けられます。葉脈は葉にあるで、根からの水や養分の通り道である道管等の木部、葉で作られた栄養分の通り道である師管等の師部があります。
光合成:緑色植物が光のエネルギーを使って、二酸化炭素と水からデンプン(糖)などの有機物を合成する働きです。光エネルギーを吸収する色素である葉緑素(クロロフィル)を多量に含む葉緑体で行われます。光が強くなると光合成は盛んになりますが、ある限度以上光を強くしても、光合成はそれより盛んにはなりません。また、ある濃度までは、二酸化炭素濃度に比例して光合成が盛んになります。
補償点:呼吸による二酸化炭素の発生量と光合成による二酸化炭素の吸収量がつり合う時の光の強さのことです。 :それ以上、光を強くしても二酸化炭素の吸収量は一定になる時の光の強さのことです。
呼吸:酸素を吸って二酸化炭素を出す呼吸器官などでの呼吸(外呼吸、ガス交換)とエネルギーを取り出す細胞の呼吸(細胞呼吸、内呼吸)があります。光エネルギーが得られない時には光合成は行われませんが、呼吸は常に行われていますので、見かけの光合成速度=光合成速度-呼吸速度という関係があります。
光合成による産物のゆくえ:葉で作られたデンプンは、夜間のうちにブドウ糖やショ糖等の水に溶けやすい物質に変えられ、師管を通って体の各部に移動します。
陽葉:光が十分当たる所にある葉です。葉肉が厚く、光合成や呼吸の速度は陰葉よりも大きくなります。
陰葉:弱い光しか当たらない所にある葉です。葉肉が薄く、光合成や呼吸の速度は陰葉よりも小さくなります。
陽生植物:呼吸速度が大きく、補償点が高いために、日なたを好む植物のことです。
陰生植物:呼吸速度が小さく、補償点が低いために、弱い光のもとでも生育できる植物のことです。
蒸散:植物体の表面から水蒸気が放出される現象です。導管は非常に細く、水の分子は互いに離れにくい性質である凝集力を持つため、導管の水は蒸散によって引き上げられます。
茎の構造:双子葉類も単子葉類も表皮・維管束・髄という基本構造は共通していて、双子葉類では維管束を構成する師部と木部の間に細胞分裂が盛んな形成層があります。
根の構造:タンポポやダイコンなどの双子葉類の根には主根と側根があり、イネやトウモロコシなどの単子葉類の根はひげ根になっています。根の先の方には根毛が生えていて表面積を大きくしており、水や養分を吸収するのに好都合になっています。また、根の先端である根冠の少し上の部分を根端分裂組織と言い、形成層と共に細胞分裂が活発であることから、染色して顕微鏡で観察する材料によく使われます。


【生物多様性】
様々な生物が生存できる豊かな環境は人間にとっても好適な環境と考えられ、生物の絶滅の危機ともあいまって、1992年に生物多様性条約が採択されました。ここでは生態系の多様性・種の多様性・遺伝子の多様性という3つのレベルでの多様性が重視されています。これを受けて、学校や公園などでも木や草や岩や石等を使い、あるがままの自然を生かして生物が住みやすい環境を作り、生物多様性を保持するビオトープが積極的に推進されるようになってきました。


2、動物の分類と構造

生物の発生史においてターニングポイントはいくつもありますが、中でも生命の誕生、有性生殖の誕生、人類の誕生は画期的な変化だと言えるでしょう。特に人類の誕生に関しては、母親から子に受け継がれるミトコンドリアDNAに着目し、母の母の母の…と女系をたどることで、現生人類の最も近い共通女系祖先ミトコンドリア・イブの存在が指摘され、大変な反響を呼びました。この女性は約20万年前(ここはかなり幅があります)にアフリカに生存していたと推定され、現生人類のアフリカ単一起源説を支持する有力な証拠の1つとなっています。
ところで、動物園等でライオンやトラの母親の乳の出が悪い時、乳母犬に育てさせることがありますが、当然のことながら、犬に育てられたからといってライオンやトラが犬になるわけではなりません。ところが、野生児の例のように人間は動物に育てられるとその動物のようになってしまい、カントが「人間は教育されなければならない唯一の被造物である」と指摘した通りのようです。言語習得等にも臨界期があって、それを過ぎると身に付かなくなるといったことも、これを裏付けます。また、ポルトマンが「人間は他のホ乳類と比べ、1年ほど早産である」と言ったように、生まれて数時間もすれば1人で立てて歩けるようになる牛や母親にしがみつくだけの強い握力を持ったサルとは違い、人間の赤ちゃんは絶対的な庇護と養育を前提とする無力な存在として生まれてきます。こうして見ると、人間を人間たらしめた人格とか人間性といったものの起源は一体どこにあるのか?といった興味深いテーマが出てくるのです。突然変異でサルから人類が誕生しても、サルに育てられれば、サルになっちゃいますもんね。

種の分類:界、門、、、科、属、の各段階で分類していきます。例えばヒトは、動物界、セキツイ動物門、ホ乳綱、霊長目、ヒト科、ヒト属、ヒトとなります。
無セキツイ動物:背骨が無い動物のことです。節足動物や軟体動物(タコ、イカ、ハマグリ等)、環形動物(ミミズ等)等があります。
節足動物:昆虫類、甲殻類(エビやカニの仲間)、クモ類(クモやサソリの仲間)、ムカデ類・ヤスデ類です。外骨格があり、体や足に節があります。
セキツイ動物:背骨を持っている動物です。魚類、両生類、ハ虫類、鳥類、ホ乳類があります。内骨格と筋肉を使って運動します。
動物名 皮膚 呼吸器 体温 生まれ方
魚類 フナ、コイ等 うろこ えら 変温 卵生(水中)
両生類 カエル、イモリ、サンショウウオ等 粘液 親は肺と皮膚、子はえら 変温 卵生(水中)
ハ虫類 ヘビ、トカゲ、カメ、ヤモリ等 うろこ 変温 卵生(陸上)
鳥類 ニワトリ、ハト等 羽毛 恒温 卵生
ホ乳類 サル、イヌ等 体毛 恒温 胎生
肉食動物:犬歯・つめが発達し、目は前方についていて、距離感がききます。
草食動物:臼歯が発達し、目は側方につき、視野が広くなっています。

五感:視覚、聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚(痛覚、圧覚・触覚、冷覚、温覚)を言います。
目の構造:光→瞳孔(ひとみ)→水晶体(レンズ)→網膜→視細胞→視神経→視覚となっています。
黄斑:網膜の中心部を言います。レンズの中央を通った光が到達する所です。何かをじっと見つめる時は、その物体の像は黄斑に写っています。
盲斑:視神経が束になる1点で、視細胞が分布しておらず、この部分では光を感じ取ることができません。
明暗調節:カメラのしぼりに相当するが伸縮することによって目に入る光の量を調節します。暗い所では瞳孔(ひとみ)を拡大し、明るい所では瞳孔を縮小します。
遠近調節:水晶体の厚さを変えることによって焦点距離を調節します。
遠調節(遠くのものを見る時) 近調節(近くのものを見る時)
毛様体がゆるむ。 毛様体が収縮する。
チン小帯が引かれる。 チン小帯がゆるむ。
水晶体が薄くなる。 水晶体の厚さが増す。
焦点距離が長くなり、遠くのものが網膜上に像を結ぶ。 焦点距離が短くなり、近くのものが網膜上に像を結ぶ。
耳の構造:鼓膜(外耳、空気の振動によって振動)→(中耳、振動を増幅)→うずまき管(内耳)→リンパ液→基底膜→聴細胞(コルチ器)→聴細胞→聴覚となっています。
平衡感覚:平衡石(耳石)が体の傾き等を受容する前庭(内耳)と、リンパ液が回転運動の刺激を受容する半規管(内耳)によって生じます。
中枢神経系:受容器(感覚器官)で感知した信号を統合して判断し、正しい命令を効果器(運動器官等)に伝えるため、神経細胞が集まって特別な組織を作ったものです。脳と脊髄からなります。
脳:大脳(知覚、記憶、理解、感情、思考、判断等)、間脳(体温・水分・血圧等の調節)、中脳(姿勢保持、眼球運動等)、小脳(運動等)、延髄(呼吸、循環等)からなります。ホ乳類では大脳皮質は、本能や情動の中枢である古い皮質と感覚や運動及び様々な高度な精神活動の中枢である新皮質からなり、ヒトの大脳は新皮質が非常に大きいのが特徴です。
脊髄:受容器や効果器と脳との間の興奮の中継や、排便、排尿、しつがい反射等の脊髄反射の中枢です。反射とは無意識に素早い反応を行う仕組みを言います。
末梢神経系:中枢神経系と体の各部との間をつないでいる神経系です。感覚神経・運動神経等の体性神経系と交感神経・副交感神経の自律神経系からなります。
自律神経系:間脳の視床下部を統合中枢として、活発な興奮状態や活動を向上させなければならない時に強く働く交感神経と休息中や安眠中に活動が高まる副交感神経からなります。
視床下部:浸透圧・体温・血糖値等の内部環境の変化を敏感に感知します。恒常性維持の中心的役割を担っています。
神経細胞(ニューロン):信号を受け取る樹状突起、核を持った細胞体、信号を伝える軸索、軸索の末端が狭い隙間を隔てて、次のニューロンや効果器と連絡しているシナプス等からなります。
興奮の伝導:通常、神経細胞の内部は-の電気、外部は+の電気を持っていますが、刺激を受けると電気の+-が逆転し、その信号が両方向へ伝えられていきます。
興奮の伝達:神経細胞の興奮は、シナプス小胞から化学物質が放出されることによって、隣の神経細胞へと伝えられます。化学物質は片方の細胞からしか分泌されないので、信号は一方向にしか伝わりません。

骨格:セキツイ動物のように内部で体を支える内骨格と、昆虫のように外部から体を支える外骨格があります。骨格の所々には関節があり、筋肉が骨とでつながっています。
骨格筋:筋繊維(横紋筋)が束になったものです。横じまが見られる横紋筋で、意志で動かすことができ、強い力が出せます。さらに素早い動きはできるが疲れやすいと、素早い動きはできないが疲れにくいとがあります。速筋は短距離走向きで、遅筋は長距離走向きですね。
:横紋筋で心臓の筋肉を構成しています。意志で動かすことはできませんが、強い力が出ます。
:横紋を持たない内臓筋です。意志で動かすことはできず、力も弱いですが、疲労しにくい特徴があります。
消化:食物を細かく分解することで、歯でかみくだいたりして物理的に力を加える場合を物理的消化、消化酵素によって化学的に分解する場合を化学的消化と言います。
栄養素:三大栄養素として炭水化物、脂肪、タンパク質、副栄養素としてビタミン、ミネラル等があります。
ヒトの消化系:口→食道→胃→小腸→大腸→肛門(消化管)と、体の万能工場である肝臓、胆汁を分泌する胆のう、すい液を分泌するすい臓等を指します。

消化酵素:消化液に含まれる、消化を助けるタンパク質の一種です。多くの酵素は体温に近い35℃前後で最もよく働き(最適温度)、酵素によって最もよく働くpH(最適pH)も決まっています。
基質特異性:1つの酵素は1種類の物質(基質)にしか作用しません。
触媒作用:酵素は化学反応を手助けするだけで、酵素自身は反応の前後で変化しません。
消化酵素 働き 消化液
アミラーゼ デンプン→麦芽糖(ブドウ糖が2個結合) だ液、すい液
ペプシン タンパク質→ペプトン(アミノ酸が数十個くらい結合) 胃液
トリプシン ペプトン→ポリペプチド(アミノ酸が10個くらい結合) すい液
リパーゼ 脂肪→脂肪酸+モノグリセリド(脂肪酸1個とグリセリン1個が結合) すい液
マルターゼ 麦芽糖→ブドウ糖 小腸壁
ペプチターゼ ポリペプチド→アミノ酸 小腸壁
ブドウ糖の吸収:ブドウ糖は小腸の柔毛(柔突起)の毛細血管に吸収され、肝門脈を通って肝臓に入り、エネルギー源に利用されます。余分なブドウ糖は肝臓でグリコーゲンとして蓄えられます。
アミノ酸の吸収:アミノ酸は小腸の柔毛の毛細血管に吸収され、肝門脈を通って肝臓に入り、タンパク質に再合成されて主に体を作ります。
脂肪酸・モノグリセリドの吸収:脂肪酸とモノグリセリドは小腸の柔毛に吸収され、再び脂肪になってリンパ管に入りエネルギー源となります。

血液の組成:赤血球、白血球、血小板、血しょうからなります。
赤血球:ヘモグロビンという鉄を含んだタンパク質を大量に含み、酸素を運搬します。
白血球:細菌等を食べること(食作用)によって取り除くマクロファージ、異物(抗原)に対して抗体を作ることによって細菌等を取り除く働き(抗原抗体反応)をするリンパ球等があり、細菌等の外敵から体を守る働き(免疫)をしています。
血小板:出血時に血液を固める作用(血液凝固反応)があります。
血しょう:ブドウ糖等の栄養分、二酸化炭素や尿素等の不要物、ホルモン等を運搬します。
組織液:毛細血管から組織細胞にしみ出した血しょうのことです。組織細胞はこれを使って、呼吸で生きるためのエネルギーを取り出します。できた二酸化炭素などの不要物は組織液を通って、毛細血管に入ります。
リンパ液:組織液がリンパ管に入ったものを言い、必ず1つ以上のリンパ節を通過します。
血液の循環:血液が肺を通り、新鮮な酸素を取り込む肺循環と、血液が全身を循環するがあります。大静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺胞の毛細血管→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→全身の毛細血管→大静脈となっています。

ヒトの排出系:アンモニアは毒性が強いので肝臓で尿素という害の少ない物質に変えられ、腎臓で血液の中の尿素等の不要物をこしとって、尿として輪尿管に送り、ぼうこうから排出します。
尿の生成:原尿→細尿管で有用成分の再吸収→集合管で水分の再吸収→腎う→輸尿管→ぼうこうとなっています。


【犬好きの人類学と猫好きの人類学】
人類にとって最も身近な動物は犬と猫と言っても良さそうですが、ある人類学者によれば、大別して犬好きの人類学者と猫好きの人類学者がいるそうです。つまり、民族誌的事実が好きで、「事実に語らしめる」という戦略を好む人類学者はたいてい犬好きで、もっぱら理論構築を好む人類学者はたいてい猫好きなのだそうです。そして、両者が統合されて初めて、人類学は意味のあるものとなるのだということです。


3、細胞と生殖・発生・遺伝

ヒトの体は約60兆もの細胞からできていますが、元はと言えば、たった1個の受精卵からスタートしたのであり、それが分裂と成長を繰り返してここまで到達するのですから、驚くべき話ですね。また、最初の受精卵の時点でDNAにすでに設計図があり、それが何年もかけて発現していって現実化していくわけですから、生命の奇跡としか言いようがない現象です。日本は世界に冠たるロボット大国ですが、完全なる人間型ロボットは夢のまた夢なのです。

単細胞生物:個体が1つの細胞でできた生物です。ゾウリムシ、アメーバ、ミドリムシ等。
多細胞生物:個体が多数の細胞からできている生物です。細胞→組織→器官→個体という構造になっています。
細胞の構造:核(核膜、核小体、染色体)、細胞質基質、細胞膜、細胞壁(植物細胞、セルロース)、ミトコンドリア(呼吸)、小胞体(物質輸送)、リボソーム(タンパク質合成)、ゴルジ体(分泌)、葉緑体(植物細胞、葉緑素クロロフィル、光合成)、液胞(植物細胞で発達、細胞液)、中心体(動物細胞が細胞分裂する際に紡錘糸の形成)等があります。
染色体:生物の設計図である遺伝子とタンパク質からできており、遺伝子はDNA(デオキシリボ核酸)からできています。同じ大きさ・形の染色体が2本ずつあり、これらを相同染色体と言い、一方は父親から、もう一方は母親からもらったものです。ヒトは23対46本の染色体を持っており、23本の染色体1組の中にヒト1人分の遺伝情報が含まれていて、これをゲノムと言います。普通は体細胞の中に2組のゲノムを持ちます。
原形質流動:細胞質中の葉緑体や他の粒が細胞質基質の流れに乗って、一定の方向に動いている現象です。
細胞分裂:体細胞分裂(1個の母細胞→2個の娘細胞、普通は核分裂→細胞質分裂)、減数分裂(染色体数を半分に分けて生殖細胞形成)の2種類があります。
核分裂:(染色体の複製)→前期(染色体の凝縮)→中期(相同染色体が赤道面に並ぶ)→後期(染色体が両極へ移動)→終期(細胞質が二分)となります。
細胞質分裂:植物細胞では終期に細胞版を形成します。

無性生殖:コピーのように同じタイプの個体を増やします。分裂(酵母菌等は特に出芽と言います)、胞子(アオカビなどの菌類)、栄養繁殖(栄養生殖、ジャガイモ等)、出芽(ヒドラ等)等があります。
有性生殖:雌が作る卵や卵細胞の核と、雄が作る精子や精細胞の核を合体させて新しい個体を作る生殖方法です。多様な形質の個体を作ることができるので、種全体としては絶滅しなくてすむ確率が高くなります。精子が卵の中に入り、それぞれの核が合体することを受精と言い、1つの精子が卵に進入を始めると受精膜が形成され、次の精子が進入するのを妨げます。
発生:受精卵が細胞分裂を開始してから個体が完成するまでのことです。
遺伝:親の形質が子に伝わることを言います。
メンデルの法則:メンデルはエンドウの7の形質に注目して実験を重ね、遺伝要素(エレメント、遺伝子に相当)を仮定して、優性の法則、分離の法則、独立の法則を発見しました。
優性の法則:丸い種子をつくる親(遺伝子型はAA)としわのある種子をつくる親(遺伝子型はaa)をかけ合わせると、その子(雑種第一代、F1と表します)は全て丸い種子を持ちます(遺伝子型はAa)が、このようにF1で対立形質のうち優性形質だけが現れることを言います。また、ここで現れなかった形質を劣性形質と言います。
分離の法則:減数分裂によって配偶子(生殖細胞)が形成される時に、相同染色体はそれぞれ分かれて別々の配偶子に入るので、対になっていた遺伝子もそれぞれ分かれて別々の配偶子に入ることを言います。例えば、F1(遺伝子型はAa)同士をかけ合わせる(自家受精)と、遺伝子型はAA:Aa:aa=1:2:1となり、表現型は丸い種子:しわのある種子=3:1となります。
独立の法則:対立遺伝子が何組あっても、それらが全て異なる相同染色体の組にある場合、各組の対立遺伝子は互いに影響し合うことなく、独立に配偶子に入ることを言います。


【20世紀最大の発見:DNA】
生命の設計図であるDNAは遺伝子の本体で、デオキシリボース(糖)、リン酸、塩基(アルカリ性の物質)から構成されていて、この3つの物質が結合したものをヌクレオチドと言います。DNAの塩基にはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類があり、AとT、GとCが互いに対になるように結合して、ヌクレオチドが多数連なった長い鎖2本がらせん状に規則的にねじれた二重らせん構造をしています。こうしたDNAの立体構造を解明したワトソンとクリックはノーベル生理学・医学賞を受賞し、ここから分子生物学という新たな生物学の分野が開拓されて、今日のゲノム解読にまで至っているのです。