理科力アップ講座

2 化学

1、物質の状態変化

物質の基本的な構成要素を元素と言いますが、現在、100種類余りの元素が確認されています。現代化学が明らかにした自然の驚異は、5000万種類の物質がほんの100種類程度の元素によって構成されていることなのです。 ところで、元素とくれば周期表ですね。これはメンデレーエフがそれまでに発見されていた元素を原子量順に並べると、性質の似た元素が周期的に現れることに気づいて作成したものです。メンデレーエフは周期性から考えて、空欄となっている所に入る未知の元素の存在とその性質を予言し、それが的中させたことで一躍有名になりました。とりあえず、原子番号20までは「水兵リーベぼくのふね、ななまがりシップス、クラークか」などと歌いながら覚えておきましょう。

H He Li Be B C N O F Ne Na Mg Al Si P S Cl Ar K Ca
水 兵リーベぼく の ふ ね ななまがりシップス クラークか


周期表:元素を原子番号の順に並べ、性質がよく似た元素を縦の同じ列に並べた表のことです。縦の列を族、横の行を周期と言い、18族、7周期からなります。例えば、1族はHを除いてアルカリ金属元素、2族はBe, Mgを除いてアルカリ土類金属元素、17族はハロゲン元素、18族は希ガス元素と言います。また、1・2族と12~18族を合わせて典型元素と言い、3~11族までは遷移元素と言います。非金属元素は全て典型元素ですが、金属元素は典型元素と遷移元素の両方があります。
同素体:同じ元素の単体でも性質の異なるものです。酸素(O2)とオゾン(O3)、黒鉛(グラファイト)とダイヤモンドとフラーレン(C60等)、黄リンと赤リン等があります。
炎色反応:ある種の元素を含んだ物質を炎の中に入れると、その元素に特有の色が現われることです。
沈殿法:未知の物質を水に溶かし、特定の試薬を加え、この時に生じる沈殿物の色によって物質に含まれている元素を特定する方法です。
混合物:空気や海水のように何種類かの成分物質がいろいろな割合で混じり合ったものです。
純物質:窒素や酸素、塩化ナトリウム、水等のように1種類の成分物質からなるものです。1種類の元素からなる単体と2種類以上の元素からなる化合物があります。
分離:混合物から成分の純物質を取り出す操作です。取り出した物質から不純物を取り除いて、より高純度の物質を得るための分離操作を精製と呼びます。
ろ過:液体とその液体に溶けない固体の混合物を、ろ紙等を用いてこし分ける分離法です。
蒸留:海水から純粋な水を得る場合のように、物質の沸点の差を利用した分離操作です。沸点の異なる2種類以上の液体からなる混合物も蒸留によって分離することができ、この方法は分留、あるいは分別蒸留と呼ばれ、石油の精製に利用されています。
昇華:ドライアイス、ナフタレン等のように、固体が液体の状態を経ずに直接蒸発する現象を言います。この現象を利用する分離法を昇華法と呼びます。
抽出:物質によって溶媒への溶けやすさに違いがあることを利用し、目的とする物質だけを溶かして分離する方法です。
再結晶:水等に溶けることのできる物質の量が温度によって変化することを利用する分離法です。
クロマトグラフィー:物質の吸着力の違いを利用して分離・精製を行う方法です。
ガスバーナーの使い方:
①ガス調節ねじ、空気調節ねじが閉まっているかを確認します。
②元栓を開き、ガス調節ねじを開いて点火します。
③炎の大きさを調節してから空気調節ねじを回し、炎の色がうす青色(完全燃焼している状態)になるように空気量を調節します。
④消し方はこの逆です。
物質の状態変化:温度条件によって、固体⇔液体⇔気体と状態変化することを言います。
融解:固体状態から液体状態に変化することです。その時の温度を融点と言い、融解するのに必要な熱量を融解熱と言います。
凝固:液体状態から固体状態に変化することです。その時の温度を凝固点と言いますが、融点と同じ温度になります。 蒸発:液体状態から気体状態になることです。液体の内部からも気体になることを特に沸騰と言い、その時の温度を沸点と言います。蒸発するのに必要な熱量を蒸発熱と言います。ちなみに突沸と呼ばれる急激な沸騰現象が起こるのを防ぐために、沸騰石を入れたりします。
凝縮:気体状態から液体状態になることです。液化、凝結とも言います。
密度:物質1㎤当たりの質量です。単位はg/cm3です。
化学変化:電気分解のようにある物質から性質の異なる別の物質が生じる変化のことです。化学反応とも言います。氷の融解のように物質そのものは変化せず、物質の状態だけが変わる変化は物理変化と言います。


【水の不思議】
一般に物質の密度は固体>液体>気体となるのですが、水だけは液体の密度が一番大きく、このため、氷が水に浮くという現象が起こってきます。地球上は何度も氷河期を通過していますが、もしも水のこの性質がなかったなら、海は海底から氷結していき、生物は絶滅しかねませんでした。水はまた蓄熱性が高く、他の物質に比べて暖まりにくく、冷めにくいため、膨大な量の熱エネルギーを輸送する役割も演じています。地球も表面だけ見れば、むしろ水球と呼ぶべきですね。


2、気体と水溶液の性質

錬金術は化学的手段を用いて卑金属から貴金属(特に金)を精錬しようとする試みのことですが、その試行の過程で、硫酸・硝酸・塩酸等、現在の化学薬品の発見が多くなされており、実験道具が発明されました。その成果は現在の化学にも引き継がれています。
この錬金術と化学を分けたのは、1662年に気体に関して、「温度一定の下で、圧力と体積は反比例する」というボイルの法則を発見したボイルであったとされます。やがて、1787年にはシャルルが「圧力一定の下で体積は絶対温度に比例する」というシャルルの法則を発見し、両者の業績はボイル・シャルルの法則としてまとめられ、気体に関する基本法則の1つとなります。そして、1774年には「近代化学の父」と称されるラボアジエが「化学反応の前後において物質の総質量は変化しない」という質量保存の法則を発見し、化学現象における細心な測定と定量的観察を要求したことで、化学は近代科学として確立したとされるのです。

水上置換:酸素、窒素、一酸化炭素等、水に溶けない気体の補集法です。上方置換:アンモニア等、水に溶け、空気より軽い気体の補集方法です。下方置換:塩化水素、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素等、水に溶け、空気より重い気体の補集方法です。
水素(H2):亜鉛、マグネシウムなどの金属に塩酸や希硫酸を加えて発生させます。無色無臭で水に溶けにくいので、水上置換で捕集します。物質の中で最も軽く、火をつけると燃え(可燃性)、水を生じます。
酸素(O2):二酸化マンガンにうすい過酸化水素水(オキシドール)を加えて発生させます。無色無臭で水に溶けにくので、水上置換で捕集します。物が燃えるのを助ける性質(助燃性)があり、酸素の中で物質を燃やすと激しく燃えます。空気の約21%を占め、地殻中でも最も多く含まれている元素であり、大部分がケイ素と結合して二酸化ケイ素SiO2(石英)やケイ酸塩になっています。
二酸化炭素(CO2):石灰石・大理石(炭酸カルシウムCaCO3)や卵の殻にうすい塩酸を加えると発生します。また、炭酸水素ナトリウムを加熱しても発生します。無色無臭で水に少し溶け、空気より重いので、下方置換で捕集します。石灰水に吹き込むと、炭酸カルシウムの白色沈殿を生じます。固体をドライアイスと言います。水溶液は炭酸水と言い、弱酸性を示します。物を燃やさない働きがあります。
アンモニア(NH3):塩化アンモニウムに水酸化カルシウムを混合して加熱したり、アンモニア水を加熱したりして発生させます。無色で刺激臭(鼻をつく臭い)があって、水によく溶け、空気より軽いので、上方置換で捕集します。水溶液は弱アルカリ性を示します。
窒素(N2):無色無臭で水に溶けにくく、空気より少し軽いので、水上置換で捕集します。空気の約78%を占め、安定した気体です。
二酸化窒素(NO2):赤褐色の刺激臭の気体で、きわめて有毒です。銅に濃硝酸を反応させて得られ、水に溶けて硝酸(HNO3)を生じます。
硝酸(HNO3):無色・発煙性の液体で、強い酸性を示します。また、酸化作用が強く、塩酸や希硫酸には溶けない銅や銀等も溶かしますが、鉄・ニッケル・アルミニウム・クロムは金属表面に緻密な酸化被膜を作り、金属内部を保護する不動態をつくるため、濃硝酸には溶けません。
二酸化硫黄(SO2、亜硫酸ガス):硫黄を燃焼させて作ります。無色で刺激臭があり、水に溶け、空気より大変重いので、下方置換で捕集します。酸性雨の原因となり、漂白作用があります。水溶液を亜硫酸(H2SO3)と言い、これが酸化されて三酸化硫黄(SO3)になり、三酸化硫黄が水に溶けると硫酸(H2SO4)になります。
硫酸(H2SO4):濃硫酸は吸湿性が強く、乾燥剤や脱水剤に使われます。希硫酸は強い酸性を示しますが、酸化作用は無く、脱水性もありません。
硫化水素(H2S):空気より重い、無色の気体で、水に溶けやすいので、下方置換で捕集します。また、腐卵臭を持ち、有毒です。
塩素(Cl2):緑黄色・刺激臭のある有毒気体で漂白性を示します。水溶液を塩素水と言い、漂白性、殺菌性を示します。プールや水道水などは塩素殺菌ですね。
塩化水素(HCl):水によく溶け、その水溶液が塩酸です。
塩酸:強い酸性を示し、鉄・亜鉛・アルミニウム等を溶かして水素を生じます。
溶液:物質を水等の液体に溶かしたものです。溶かしている液体を溶媒、溶けている物質を溶質と言います。溶媒が水の時は特に水溶液と言います。
溶液の濃度:溶液の質量に対する溶質の質量の割合(%)で表します(質量パーセント濃度)。 濃度〔%〕= 溶質の質量 溶液の質量 ×100 溶解度:一定量の液体に溶かすことができる物質の質量は、物質の種類と温度によって決まっています。水溶液の場合は水100gに溶ける物質の質量〔g〕で表します。普通、温度が高くなるほど、固体の溶解度は大きくなります。固体の溶解度と温度との関係を表したグラフを溶解度曲線と言います。
飽和溶液:溶解度の値まで溶質が溶媒に溶けこんでいる溶液のことです。飽和溶液を冷却すると、溶け切れなくなった溶質は固体になりますが、この時に結晶と呼ばれる非常に純度の高い状態になります。
酸性:塩酸HCl、硫酸H2SO4、酢酸CH3COOH等の水溶液に見られるような、(1) 酸味を示す、(2)鉄Fe、亜鉛Zn等の金属と反応して水素H2を発生する、(3)青色のリトマス紙を赤色に変える、等の性質を指します。
アルカリ性:水酸化ナトリウムNaOH、水酸化カリウムKOH、アンモニアNH3等の水溶液に見られるような、(1)苦味がする、(2)手につけるとぬるぬるする、(3)赤色のリトマス紙を青色に変える、(4)酸と反応して酸性を打ち消す、等の性質を指します。塩基性とも言います。
中性:水や塩化ナトリウム水溶液等、酸性もアルカリ性も示さないものです。
水素イオン濃度:酸性、アルカリ性の強弱を表します。ピーエイチpH(水素イオン指数)と言います。中性pH=7、酸性pH<7、アルカリ性pH>7となっています。
pH指示薬:フェノールフタレインのように、pHによって色が変わることを利用して、水溶液のpHを調べるために使われる試薬のことです。指示薬にはpHによって変色する範囲が決まっており、これを変色域と言います。
(1)メチルオレンジ:酸性は赤、アルカリ性は黄色。
(2)ブロモチモールブルー:酸性は黄色、中性は緑、アルカリ性は青。
(3)フェノールフタレイン:酸性は無色、アルカリ性は赤。
中和:酸と塩基が反応して、互いにその性質を打ち消し合うことです。
:中和反応において、酸の陰イオンと塩基の陽イオンから生成する化合物のことです。すなわち、酸+塩基→塩+水です。
中和滴定:中和反応における酸と塩基の量的関係を利用して、濃度不明の酸や塩基の水溶液中の濃度を求める操作です。実験器具としては、ビュレット、ホールピペット、メスフラスコ、コニカルビーカー等を使います。


【金属の王様である金も溶かす王水】
西暦800年前後に、イスラーム世界でまず食塩と硫酸から塩酸ができることが発見され、さらに濃硝酸と濃塩酸を1:3に混合することで王水が開発されました。これは金属の王様である金や白金(プラチナ)さえも溶かします。一方、中世ヨーロッパでは錬金術が流行し、あらゆる手段を尽くして金を精製しようとしていましたが、その当時生成されるあらゆる酸を用いても、肝心の金を溶かすことが出来ないという問題を抱えていました。そんな時に、十字軍を通してイスラーム世界から「金をも溶かす水」の知識が伝えられ、錬金術の発展に大いに役立つことになったのです。これは銀以外のいかなる金属も溶かし込むことから「王の水」と名付けられ、現代では医薬品・陶磁器の装飾材料・医療用の材料・金メッキの素材等、様々な分野に幅広く活用されています。


3、原子・分子とイオン

原子説・分子説は化学反応の説明と共に整備されてきました。
まず、1774年にフランスのラボアジエは、「化学反応の前後において物質の総質量は変化しない」という質量保存の法則を見出しました。
1799年にフランスのプルーストは、「ある化合物中の成分の質量比は化合物の作り方等によらず、常に一定である」という定比例の法則を提唱しました。例えば、水を作っている水素と酸素の質量比は水素:酸素=1:8で、常に一定です。
1803年にイギリスのドルトンは「物質は分割不可能な原子(atom)からできており、同種の元素に対応する原子は同質である。また、原子は生成も消滅もせず、化学変化は原子の組み合わせの変化である」という原子説を提唱し、質量保存の法則と定比例の法則を説明しました。さらにドルトンは、2種の元素AとBとが化合して異なる化合物を作る時、一定質量のAと化合するBの質量との間には簡単な整数の比の関係があることを予想し、これを実験で確認しました(倍数比例の法則)。
1808年にフランスのゲーリュサックは、「同温、同圧の下で反応物及び生成物の気体の体積は簡単な整数の比になる」ことを見出しました(気体反応の法則)。この法則はドルトンの原子説とは相容れなかったので、この矛盾を解決するため、1811年にイタリアのアボガドロは「気体はいくつかの原子が結合した分子という粒子からなる」という分子説を前提としてアボガドロの法則を提案し、気体反応の法則を説明したのです。

原子:元素とはもうこれ以上化学的に分解できない成分を言いますが、その成分を粒子の考え方で説明すると、原子という粒子になります。
分子:これ以上分離すると、その性質を保てない状態の原子団(原子の集合体)を分子と言います。分子内の原子間の結びつきを化学結合と言います。
原子核:陽子(正の電荷を持った粒子)と中性子(電荷を持たない粒子)からなります。
電子:原子核の周りに存在する負の電荷を持った粒子のことです。電子の質量は陽子や中性子の質量の約1840分の1です。
イオン:電子を失ったり、電子を得たりすることによって、全体として電荷を持った原子や原子団のことです。電子を失って、正電荷を持った陽イオンと、電子を得て、負電荷をもった陰イオンとがあります。
原子番号:原子核中の陽子の数を言い、核外の電子の数と等しくなります(原子番号=陽子数=電子数)。
質量数:原子核中の陽子と中性子の数の和です。
同位体(アイソトープ):原子番号は同じでも質量数が異なる原子のことです。
放射性同位体(ラジオアイソトープ):同位体の中で、原子核が不安定で、放射線を出して壊れていくものを指します。放射線を出す性質を放射能と言います。放射性同位体の半減期は原子によって常に一定なので、それを利用して遺物の年代を決定したり(炭素14年代測定法)、その放射線を目印に元素を追跡し、生体内や化学反応での元素の働きを調べる(トレーサー法)こと等に利用されています。
電子殻:電子は原子核を中心とした一定の空間を運動しており、その軌道を電子殻と言い、原子核に近い順にK殻、L殻、M殻、N殻・・・と呼ばれています。
電子配置:原子内の電子の配列を原子の電子配置と言います。
最外殻電子:原子の一番外側の電子殻にある電子のことです。
価電子:最外殻にある1~7個の電子のことです。内側の電子殻にある電子(内殻電子)と区別するのは、価電子が原子の性質と関係が深く、原子がイオンになったり、他の原子と結びつく時に重要な役割を果たすからです。
化学式:物質の化学組成を表わすために元素記号を用いた式のことです。分子式、組成式、イオン式、構造式等の総称です。
分子式:分子を作り上げている原子の種類と数を表す式です。<例>水素:H2 水:H2O
組成式:イオンや原子が集まって成り立っている物質について、それを作り上げている原子の種類とその数の比を表した式です。<例>水酸化ナトリウム:NaOH 黒鉛:C ダイヤモンド:C
イオン式:元素記号の右上に電荷の符号と価数をつけてイオンを表します。例えば、ナトリウムイオンはNa、マグネシウムイオンはMg2+、塩化物イオンはClのように記します。
構造式:2個の原子間で価電子を共有して結合する際の共有電子対1対につき、1本の線(価標)で表した式のことです。分子式だけでは分子内の原子の結びつきを知ることはできないので、その場合には構造式を用います。<例>水素:H-H  水:H-O-H
原子価:原子1個が持つ価標の数です。ある原子が他のいくつかの原子と結合し得るかを示す数です。
希ガス元素:ヘリウムHe、ネオンNe、アルゴンAr、クリプトンKr、キセノンXe、ラドンRnの6種の元素を指します。無色・無臭の単原子分子の気体です。原子の電子配置が安定しているため(最外殻電子はHeが2個、後は8個)、他の原子と結びつきにくい性質を持ちます。
閉殻:希ガス元素の原子と同じ電子配置を持つ電子殻のことです。電子殻が閉殻の時、最外殻電子は原子同士の結びつきに関与しません。
イオン結晶:クーロン力(静電気力)による結合であるイオン結合で、正負のイオンが規則正しく配列した固体を言います。イオン結合の結合力はかなり強いので、イオン結晶は一般に硬く、融点も高くなります。イオン結晶を融解したり、水に溶かしたりすると、陽イオンや陰イオンが自由に動けるようになるので、融解塩や水溶液は電気をよく導きます。 電解質:イオン結晶のように、水に溶かした時にイオンに分かれる物質のことです。
共有結合:互いに電子を共有して作る結合のことです。例えば水素分子H2、酸素分子O2、窒素分子N2の結合は、原子間で共有している電子の個数に応じて、それぞれ単結合、二重結合、三重結合と呼ばれます。
非金属元素:Hを除いて、非金属は周期表右側にあります。臭素(液体)を除いて、常温では気体(2原子分子)です。酸化物のうち、水に溶けるものは酸性を示します。
金属元素:17族と18族を除き、また13族~16族のいくらかを含め、約75の元素を金属元素と言います。金属元素は全て陽性で、その原子は陽イオンになりやすい性質を持ちます。典型元素の約半数が金属元素であり、遷移元素は全て金属元素です。水銀以外は常温で固体、金属の酸化物のうち、水に溶けるものはアルカリ性を示します。
金属結晶:金属元素は固体状態では規則的な原子配列を取り、これを金属結晶と言います。
金属結合:金属元素の原子は陽性が大きく、価電子は容易に原子から離れることが出来るため、原子から離れた価電子は規則正しく並んだ原子の間を自由に動き回って、原子を結びつけていますが、こうした自由電子による金属に特有な結合のことを言います。
金属の性質:金属元素の単体は独特の光沢を持ち、高い電気伝導性や熱伝導性を持ちます。また、線状に引き延ばすことの出来る性質である延性や薄く広げて箔にすることが出来る性質である展性があります。


【電子と量子力学】
 物質の性質を決めるのは電子と言ってもいいのですが、電子が太陽系の惑星のように、原子核を中心に同心円状に回っているという粒子モデルは、シュレディンガーやハイゼンベルクらにによる量子力学によって大きく修正されることになりました。量子力学は相対性理論と双璧をなす、20世紀物理学の精華ですが、電子のような素粒子を光のような波として扱うため、波動力学とも呼ばれます。太陽系の惑星なら軌道計算ができますが、量子力学によればある瞬間の電子の位置を正確に決定することは不可能で、ある特定の位置に存在する確率しか分からず、これを電子雲として表現しました。


4、化学変化と化学反応式

化学反応を反応前の物質(反応物)と反応後の物質(生成物)の化学式を用いて表わしたものを化学反応式と言います。化学変化の前後で原子の種類と数が変化しないように、各化学式の前に係数をつけていきます。代表的な化学反応式をいくつか見てみましょう。
(1)水素の発生:亜鉛Znに塩酸HClを加える。
   Zn+2HCl→ZnCl2(塩化亜鉛)+H2
(2)酸素の発生:過酸化水素水H2O2に二酸化マンガンMnO2を加える。
   2H2O2→2H2O+O2 
   MnO2は触媒として作用するので、化学反応式には書きません。
(3)二酸化炭素の発生:石灰石CaCO3に塩酸HClを加える。
   CaCO3+2HCl→CaCl2(塩化カルシウム)+H2O+CO2
(4)二酸化炭素の発生:炭酸水素ナトリウムNa2CO3の熱分解反応
   2NaHCO3→Na2CO3(炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ))+H2O+CO2
(5)アンモニアの発生:塩化アンモニウムNH4Clに水酸化カルシウムCa(OH)2を加えて加熱する。
   2NH4Cl+Ca(OH)2→CaCl2+2H2O+2NH3
(6)硫酸H2SO4と水酸化バリウムBa(OH)2の中和反応
   H2SO4 +Ba(OH)2→2H2O+BaSO4↓(硫酸バリウム(水に難溶で沈殿します))
(7)マグネシウムの燃焼:燃焼は激しい酸化であり、金属がゆっくり酸化する場合はとなります。
   2Mg+O2→2MgO(酸化マグネシウム)

原子の相対質量:原子1個の質量は非常に小さいため、その値(絶対質量)をそのまま用いるのは大変不便なので、原子の質量は「炭素原子12C1個の質量を12とする」という基準を元に原子の相対質量で扱います。
原子量:同位体の相対質量と存在比から求めた平均値です。多くの元素には何種類かの同位体が存在していますが、天然にある元素では同位体の存在比はほぼ一定しています。
分子量:原子量と同じ基準で表わした分子の質量の相対値です。
式量(化学式量):組成式を構成している原子の原子量の総和です。イオン及びイオンからなる化合物や金属のように、分子を単位としない物質では、分子量の代わりに式量を用います。
酸化:物質が酸素と化合することを言います。酸素ともう1種類の元素からなる化合物を酸化物と言い、相手の物質を酸化させる働きのある物質を酸化剤と言います。
還元:物質が酸素を失う変化のことを言います。相手の物質を還元させる働きのある物質を還元剤と言います。 過酸化水素:過酸化水素H2O2はそれ自身、強い酸化剤ですが、反応する相手の物質によっては還元剤としても作用します。
金属のイオン化傾向:金属が水溶液中で電子を放出して、陽イオンになろうとする傾向のことです。

K >Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe >Ni>Sn>Pb>(H)>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
貸そうか な  ま  あ あ て  に する な  ひ  ど す ぎる 借 金

電池:酸化還元反応を利用して電子の流れを作り、化学変化のエネルギーを電気エネルギーに変える装置です。イオン化傾向の違う2種類の金属A、Bを電解質の水溶液に浸すと、イオン化傾向の大きい金属Aは酸化され、陽イオンとなって溶け出し、生じた電子は導線中をイオン化傾向の小さい金属Bに向かって流れ、そこで還元反応が起こります。電流は電子の流れと逆向きと定義されていますので、電流はイオン化傾向小の金属Bからイオン化傾向大の金属Aに向かって流れることになります。
電極:電池において、水溶液に浸した各々の金属のことです。導線へ電流が流れ出る電極を正極と言い、導線から電流の流れ込む電極を負極と言います。
ボルタ電池:1800年にイタリアのボルタによって考案された電池です。(-極)亜鉛Zn|希硫酸H2SO4aq|銅Cu(+極)

放電:電池から電流を取り出すことです。マンガン乾電池のような一次電池の場合、放電し続けると電圧が低下して、回復することが出来ません。鉛蓄電池のような二次電池(蓄電池)の場合、放電後に外部から逆向きの電流を流すと電圧を回復させることが出来ます。
充電:電圧を回復させる作用のことです。
太陽電池:ケイ素等の半導体を用いて、光エネルギーを直接電気エネルギーに変える発電装置です。
燃料電池:水素などの燃料と酸素を用いて、酸化還元反応エネルギーを電気エネルギーとして取り出す装置です。水の電気分解の逆の反応を利用しています。
電気分解(電解):電解質の水溶液や高温の融解塩に、外部から直流電流を流して酸化還元反応を起こさせることです。


【水が爆発する?】
ナトリウムはイオン化傾向が大きく、小片でも水に入れれば爆発するように反応が進みます。ある人がこれを利用して、未開の奥地に行き、カーッとたんを水に吐きながら、ピッとナトリウムのかけらを水に飛ばして爆発させ、原住民を驚かせたそうです。そりゃそうですね。たんを水に吐いた途端、大爆発したら、とんでもない人がやってきた!と信じてしまうでしょう。