理科力アップ講座

1 物理

1、光と音

反射と屈折は古代から身近によく知られた波動の現象です。例えば、古代ギリシア最大の科学者であるアルキメデスは、たくさんの鏡を使って、太陽の光を反射させ、ローマの軍船を焼いたと言います。ちなみにアルキメデスの活躍はあらゆる分野に及んでおり、てこの原理から「私に支点を与えよ。そうすれば地球を動かしてみせよう」と言ったり、黄金の王冠に銀が混じっているかどうかを調べる中で、疲れてお湯がいっぱい入った湯船に入った際、自分の体積と等しい体積のお湯が湯船からあふれ出ているのを見て、「物体は水の中ではその物体と同じ体積の水の重さだけ軽くなる」というアルキメデスの原理を発見しています。この時、「エウレーカ、エウレーカ!」(我、発見せり!)と叫びながら、裸のまま家まで走って帰ったエピソードは有名ですね。
さて、コップの底に10円玉を入れて水を入れていき、斜めからのぞき込むと、最初は見えなかった10円玉が水を入れるにしたがって、浮き上がって見えてきます。これは光が水中から空気中に出る時に屈折したためです。あるいは、人体内部を観察する胃カメラなどに応用されている光ファイバーなども、光の全反射を利用したもので、最先端医療や情報通信の分野などで使用されています。

波:振動が次々に周囲に伝わる現象のことです。
波長:波形の山から山まで(または谷から谷まで)の長さのことです。
振動数:物質が1秒間〔s〕当たりに往復する回数のことです。単位はヘルツ〔Hz〕です。
振幅:波のない時の位置から測った山の高さ(谷の深さ)です。
入射角:反射面の法線(反射面に対する垂線)と入射波の進行方向のなす角度です。
反射角:反射面の法線(反射面に対する垂線)と反射波の進行方向のなす角度です。
反射の法則:入射角=反射角となります。
屈折波:波の速さが異なる2つの媒質の境界を波が通過し、境界で向きを変えた後の波のことです。
屈折角:屈折波の進行方向と境界面の法線(境界面に対する垂線)とのなす角度のことです。
全反射:屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ光が入る時、入射角が大きすぎると光は全て反射されます。入射角=反射角となります。
臨界角:屈折角が90°になる入射角です。
可視光:目に見える光。光の色は波長によって決まり、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫などがあります。物体それ自体は光を出さず、その反射光や透過光の波長によって、物体が何色に見えるかが決まります。
光の速さ:秒速約30万㎞です。1秒間に地球を7周半します。
光の分散:いろいろな波長の光を含んでいる光(白色光)をプリズムに当てると、屈折によって波長の違う色の光に分けられます。例えば、虹が見えるのは、太陽光線が空気中の水滴に当たり、水滴中で屈折する際に分散によって7色に分かれるためです。
光のスペクトル:波長ごとに分かれた光の色の模様です。
光軸:レンズの中心を通っている面に垂直な軸です。
焦点:光軸に平行に凸レンズに入射した全ての光が通る点です。レンズをはさんで、ちょうど反対の位置にもう1つの焦点があり、ここを通る光線はレンズを通過後、光軸に平行に進みます。
焦点距離:レンズの中心から焦点までの距離です。
実像:実際に光が集まってできる物体の像です。
虚像:実際に光が集まったものではない像です。例えば、凸レンズである虫眼鏡の焦点距離よりレンズに近い所に物体を置くと、実際よりも拡大された物体があるように見えますが、これは実像ではなく、虚像であり、実像と違って倒立していません(正立しています)。
音の三要素:高さ、強さ、音色の3つを言います。振動数が多いほど音は高く聞こえ、振動数が少ないほど音は低く聞こえます。また、振幅が大きいほど音は大きく聞こえ、振幅が小さいほど音は小さく聞こえます。また、音色とは楽器特有の音質のことで、波形の違いに表れます。
音の速さ:気温15℃ぐらいの時、空気中での音速は秒速約340m、水中では秒速約1500m、鉄の中では秒速約5950mです。
超音波:人間には聞こえない、振動数が2万Hz以上の音。コウモリなどはこれが聞こえるので、これをレーダーのように使って、夜でも飛び回っているわけですね。
音の反射:山びこ等です。
音の屈折:夜になって地表が冷えると、地表付近の温度が下がるのに対して、上空の空気の温度はあまり下がりません。そのため、音速は上空の方が速く、一度上空に出た音波の進行方向が曲げられて遠くの地表に届くため、夜になると遠くの音が聞こえるようになります。逆に昼間は地表付近の温度が上がるため、音波は上向きに屈折させられ、遠方の音は聞こえにくくなります。


【雷までの距離を測る】
「ピカッ」と雷が光ってから、「ゴロゴロ」と音がするまでの時間を測り、それに340をかければ、大体の距離を測ることができます。これは光速と音速の違いによるもので、秒速30万㎞の光が一瞬で届くのに対し、音は秒速約340mで届きますから、10秒後に雷鳴が聞こえたとしたら、10×340=3400mぐらいは離れているということになります。


2、力と運動

力と運動について扱う分野を力学と言いますが、これを大成したのがニュートンです。ニュートンはリンゴが落ちるのを見て、ものには互いに引き合う力があり、地球の引力の方がリンゴの引力よりも強いので、リンゴが地球に引き寄せられたと考え、万有引力の法則を発見したと伝えられています。ニュートンが学位を取得した頃、ロンドンではペストが大流行していて、1665年から1666年にかけて故郷に戻ってじっくりと思索する時期があったのですが、この時に微分・積分の研究や、プリズムでの分光の実験(光学)、万有引力の着想などに没頭することができたと言います。このわずか1年半ほどの期間にニュートンの主要な業績がなされているので、この期間のことは「驚異の諸年」「創造的休暇」「創造の18か月」などと呼ばれています。
ニュートンは「私は真理の大海の浜辺で貝を拾っている子どもにすぎない。世の中にはまだまだ研究しなければならないことがたくさんある」と述べていますが、日常生活レベルでは今でも有効なこのニュートンの古典力学を宇宙レベルまで発展・再構成したのが、有名なアインシュタインの相対性理論です。「世紀の天才」と評されるアインシュタインも、1905年に「光量子仮説」「ブラウン運動の理論」「特殊相対性理論」に関連するノーベル賞級の重要な論文を立て続けに発表しており、この年は「奇跡の年」として知られています。ちなみにニュートンは、「なぜ、あなたはそれほどの先見性があるのか?」と尋ねられた時、「私は、巨人の肩の上に立っているから、他の人より遠くを見渡すことが出来るのだろう」(元々は12世紀のベルナールの言葉)と答え、先人の業績の上に自らの業績があることについて述べていますが、ニュートン自身も巨人の1人として後世の天才に肩を貸したことは間違いないようです。 

力の働き:①物体の形を変える、②物体を支える、③物体の運動の様子を変化させる、3つがあります。
重力:地球上の物体が地球から引っ張られている力です。
質量:どこで測定しても同じ、てんびんで計る量であり、物質固有の量です。単位はキログラム〔kg〕です。いわゆる「物体の重さ」とは物体に働く重力のことであり、それは質量に比例します。
力の単位:
①ニュートン(記号N):1Nは質量1kgの物体に働く重力がg〔N〕(gは重力加速度の大きさ:約9.8m/s2)となるように取り決めた単位で、1kgの物体に1m/s2の加速度を生じさせるような力の大きさです。いたがって、1Nは約100gの物体に働く重力の大きさです。
②kg重(記号kgw):質量1kgの物体に働く重力の大きさです
。 圧力:単位面積の面に働く力のことです。
大気圧:空気の重さによる圧力です。海面では、面積1㎠あたり約1kgの圧力がかかり、これを大気圧または単に気圧と言います。また、1パスカル(Pa)は、1㎡の面積につき1ニュートン (N) の力が作用する圧力と定義され、ヘクトパスカルhPa(1hPa=100Pa)という単位が用いられています。
水圧:水中に置かれた物体のある面が水から受ける力です。水深がh〔m〕の時の水圧の大きさ〔単位Pa:パスカル〕は、底面積が1m2、水深がh〔m〕の水柱の重さに等しくなります。
浮力:水中にある物体が水圧の上下の差によって受ける、鉛直上向きの力です。浮力=空気中の物体の重さ-水中の物体の重さとなります。
アルキメデスの原理:浮力の大きさは、物体が排除する液体に働く重力の大きさに等しくなります。
作用・反作用の法則:1つの物体Aが他の物体Bに力を加えている時、必ず物体Bは物体Aに、同じ作用線上で大きさが等しく、向きが反対の力を及ぼします。運動の第3法則。
合力:物体に2力が働く時、この2力と同じ効果を持つ1つの力です。
力の合成:合力を求めることです。2つの力を表す矢印を2辺とする平行四辺形を作ると、その対角線が2力の合力となります。
力の分解:1つの力をそれと同じ効果を持つ2つの力に分けることです。
力のつり合い:1つの物体に2つ以上の力が働いているのに、物質が静止している状態です。力がつり合っていると、力全体では物体の運動に対して何の働きもしなくなります。作用と反作用の力がそれぞれ別の物体に働く力であるのに対して、力のつり合いは1つの物体に働く2つ以上の力に対して適用される考え方です。
張力:物体を糸で引く場合、物体が糸から受ける力です。
弾性力:ばねを変形させた時、その変形を元に戻そうとして働く力です。
フックの法則:物体に外力を加えて変形させ、その後、外力を取り去ったら元の形に戻ることを弾性変形と言いますが、この場合、変形量が小さい時は変形量と弾性力は比例します。
速度:単位時間の物体の変位で、単位はメートル毎秒〔m/s〕です。物体の変位と所用時間との比が平均の速度であり、時間差をできるだけ小さく取った時、その時間内の物体の変位との比を瞬間の速度と言います。
等速直線運動:一直線上を一定の速さで運動する運動です。等速度運動。
加速度:単位時間当たりの速度の変化です。単位はメートル毎秒毎秒〔m/s2〕。物体の速度差と所用時間との比が平均の加速度であり、時間差をできるだけ小さく取った時、その時間内の物体の加速度の変化との比を瞬間の加速度と言います。
等加速度直線運動:一直上の運動で、加速度が一定の場合の運動です。
自由落下運動:重力だけを受けて、静止していた物体(初速度0)が落下する運動です。重力加速度g=9.8m/s2です。 慣性の法則:外部から力が働かないか、あるいは働いていてもその合力が0であるならば、静止している物体は静止し続け、運動している物体は等速直線運動(等速度運動)を続けます。運動の第1法則。ガリレオによって発見され、デカルトとニュートンによって修正されました。
慣性:運動の状態を持続する性質です。
運動の法則:物体に外から力が働くと、物体には合力と同じ向きに加速度が生じ、その加速度の大きさは、それに作用する合力の大きさに比例し、その質量に反比例します。ニュートンによって発見されました。運動の第2法則。 運動の3法則:ニュートンは物体の運動を支配する法則を発見し、①運動の第1法則(慣性の法則)、②運動の第2法則(運動の法則)、③運動の第3法則(作用・反作用の法則)、の3法則として整理しました。
垂直抗力:物体が置かれている面から、垂直で上向きに受ける力です。
摩擦力:物体と接触面との間に働く、物体の動きを妨げようとする力。静止摩擦力:物体を水平なあらい面(摩擦のある面)に置き、水平方向に引くと、引く力の大きさが小さいうちは物体が動き出さません。この時、面から物体に、面に平行な逆らう力が働いており、この力を静止摩擦力と言います。
最大摩擦力:物体が動き出す限界の摩擦力です。
動摩擦力:物体が動き出した後に、物体と面との間に物体の運動を止めようとする向きに働く力です。
摩擦角:斜面に置かれた物体に対して、斜面の傾斜角(斜面が水平となす角度)を次第に大きくしていき、物体がすべり始める時の角度です。


【物理学者の夢:力の統一】
 自然界には様々な力がありますが、素粒子レベルで考えていくと、4つの基本的な力(相互作用)で説明されます。電磁気力、弱い力、強い力、重力がそれです。弱い力とは核子(陽子と中性子)の崩壊を促す力、強い力とはクォークを結合させ、陽子や中性子、中間子などを作る力のことです。電磁気力と弱い力は電弱統一理論(ワインバーグ=サラム理論)で統一され、さらに強い力も取り込んだ大統一理論まで提唱されていますが、最終的に重力をも取り込んだ超大統一理論(万物の理論)の構築はまだ夢のまた夢です。宇宙誕生直後には力は1つであり、そこから4つに分かれていったことから、超大統一理論は根元的な1つの力の探究であると同時に、宇宙創成の物理学の構築でもあるのです。


3、電気と磁気

電気と磁気は日常生活でなじみの深いものであり、特に電気なくして文明生活は成り立たないほど、現代人の便利な生活を根底から支えてくれています。この電気と磁気が密接な関係を持っていることに気づき、電磁誘導の法則や電気分解の法則等を発見して、電磁場の基礎理論を確立したのがファラデーです。ファラデーは高等教育を受けておらず、高度な数学もほとんど知りませんでしたが、史上最も影響を及ぼした科学者の1人とされ、科学史上最高の実験主義者と呼ばれています
そして、ファラデーによる電磁場理論を元に、光が電磁波であること等を明らかにして、古典電磁気学を確立したのがマクスウェルです。マクスウェルは電磁気学の最も偉大な学者の1人とされ、現代物理学の革新者アインシュタインも「自分の業績はアイザック・ニュートンよりもマクスウェルに支えられた所が大きい」と述べています。アインシュタインは壁にファラデー、ニュートン、マクスウェルの絵を貼っていたとも言いますから、その影響のほどが見て取れますね。

電荷:原子核や電子が持っている電気のことです。
電気量:電荷の量。単位はクーロン(記号〔C〕)です。
静電気力:電荷の間に働く力。電荷の大きさに比例して強くなります。セーターがパチパチしたり、ドアのノブでビリッときたりする、あれですね。
自由電子:原子から離れて自由に動ける電子のことです。
導体:金属のように、電流の流れる物質を言います。
不導体:ゴムやアクリルのように、自由電子がなく、電流が流れにくい物質のことです。絶縁体とも言います。
電流:電気の流れ。滝で言えば、水流に相当します。単位はアンペア〔A〕です。1A=1秒間に1C(クーロン)の電荷が流れる時の電流の大きさのことです。1A=1000mA(ミリアンペア)となります。
電圧:電気の流れを発生させる能力のことです。滝で言えば、滝の高さに相当します。電位差とも言います。単位はボルト〔V〕です。
電気抵抗:電流の流れにくさのことです。単位はオーム〔Ω〕です。電気抵抗が大きいほど、小さな電流しか流れません。 オームの法則:電圧と電流は比例関係にあり、比例定数Rを電気抵抗と呼びます。V=RI(電圧V〔V〕、電流I〔A〕、電気抵抗R〔Ω〕)と表現されます。
回路:乾電池、豆電球、抵抗線、スイッチ等を導線でつなぎ、電流が流れる道筋のことです。電流回路とも言います。電流は電池の+極から出て、-極に流れ込むと決められています。実際には電子が逆向きに移動していることに注意しましょう。
直列回路:回路のどこでも電流の強さは等しくなります。また、回路の各区間の電圧の和が回路全体の電圧に等しくなります。
並列回路:枝分かれした後の各点を流れる電流の和は、電源から流れる電流の強さに等しくなっています。また、枝別れした各区間の電圧は等しくなります。
抵抗の違い:同じ太さの金属線では、金属線の抵抗は長さに比例します。また、同じ長さの金属線では、金属線の抵抗は断面積に反比例します。
合成抵抗:2種類の電気抵抗を直列接続すると、電流は2つの電気抵抗を通らなければならないので、電気抵抗は大きくなりますが、並列接続すると、電流は両方通ることができるので、電気抵抗は小さくなります。 直列回路の全抵抗:R=R1+R2(各抵抗の和)。
並列回路の全抵抗: 1 R = 1 R 1 + 1 R 2 (各抵抗の逆数の和)。
ジュールの法則:導体に電流が流れる時に発生する熱量(ジュール熱)は電流の強さと電圧の強さと時間に比例します。単位はジュール〔J〕です。発熱量Q〔J〕=電流I〔A〕×電圧V〔V〕×時間t〔s〕です。
電力:単位時間当たりに変換する電気エネルギーのことです。単位はワット〔W〕です。これは仕事率に対応しています。電力P〔W〕=電流I〔A〕×電圧V〔V〕となります。消費電力とも言います。
電力量:ある時間に利用した電気エネルギーの総量のことです。単位はジュール〔Jです〕。1Wの電力を1秒間使用した時の電力量は、その際に発生する熱量と等しく、1Jと言います。キロワット時(記号kWh)という単位を使うこともありますが、これは1kWの電力を1時間使った時に消費されるエネルギーのことです。
磁力:2つの磁石の磁極を接近させると、互いに力を及ぼし合います。N極同士、S極同士は反発し(斥力)、N極とS極は引き合います(引力)。
磁界:電流相互、あるいは磁石と電流との間には力が働きますが、この力が働く場のことで、磁場とも言います。 磁力線:磁界の各点での磁界の向きを表す線のことで、磁石のN極からS極に向かいます。

電気と磁気の基本的関係:
①電流はその周囲に磁界を生じます(右ねじの法則)。
②磁界中を流れる電流は磁界から力を受けます(フレミングの左手の法則)。
③磁界の変化はそれを妨げる向きの電圧を生み出します(誘導電流→誘導起電力)。
右ねじの法則:右ねじの進行方向が電流の向き、右ねじの回転方向が磁界の向きに対応しています。
フレミングの左手の法則:左手の親指、人差し指、中指をそれぞれ直角にした時、中指が電流の向き、人差し指が磁界の向き、親指が力の向きとそれぞれ対応しています。
コイルの作る磁界:コイルに電流を流すと、磁界ができます。磁界の強さは、電流の強さ・巻き数・鉄心の太さに比例します。
電磁誘導:導線でできたコイルを磁界中に置き、コイルに垂直な方向の磁界の大きさを変化させる時、変化を妨げる磁界を生じる電流が流れますが、これを電磁誘導と言い、生じた電流を誘導電流と言います。誘導電流は、磁界が大きいほど、コイルの巻き数が多いほど、コイル内の磁界の変化が速いほど、強くなります。
直流モーター:電池で駆動するモーターです。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則によって、コイルのN極側とS極側はそれぞれ上下逆向きに力が働き、コイルが回転しますが、90°以上回転してコイルが磁界に対して反対向きになると、整流子が電流の向きを反対にします。このため、コイルのN極側とS極側はそれぞれ同じ向きの力を受け続け、コイルは同じ向きに回転し続けるのです。
発電機の原理:コイルのそばで磁石を回転させると、コイル内の磁界が絶えず変化するため、電磁誘導によって誘導電流が流れます。


【超伝導とリニアモーターカー】
ある種の金属・合金・酸化物を一定温度以下まで冷却したとき、電気抵抗がゼロになることを超電導と言います。超電導状態となったコイル(超電導コイル)に一度電流を流すと、電流は永久に流れ続け、極めて強力な磁石(超電導磁石)となります。これを応用した技術がリニアモーターカーで、電磁誘導によって車両と反発する方向に磁界を生じさせ、車両が浮上させる誘導反発方式が採用されています。


4、エネルギー

産業革命に連動して起こったのがエネルギー革命ですが、第1次エネルギー革命は蒸気力でした。それまで人間が自然界から引き出していた標準的な力は馬であり、だから力の単位に「馬力」という言葉が残っているわけですが、この蒸気力によって24時間、365日間休むことなく利用できる機械力を手に入れたわけです。 そして、第2次エネルギー革命は石油と電気とされます。いずれもあらゆる物質、エネルギーに変換され、多種多様に利用されています。
さらに第3次エネルギー革命として、原子力が登場してきました。実は原子力にも3段階があり、第1の原子力は核分裂の原理で、現在の原子力発電所はこのレベルとなります。第2の原子力は核融合の原理で、太陽のように水素原子を融合してヘリウム原子を作り、エネルギーを得ようというものです。原料とする重水素、三重水素は海にいっぱいありますから、約1億度の温度をコントロールする技術が可能になれば、理論上は無尽蔵とも言えるエネルギーが手に入るわけです。さらに第3の原子力と呼ばれるのが、反物質の原理です。反物質が物質と作用すれば、理論上は質量が100%エネルギーに転換されますから、究極のエネルギー革命と言えるでしょう。ただ、ここまで来ると、どうやってコントロールできるのか、さっぱり分かりませんね。

仕事:物体に力を加えて動かすことを言います。力を加えても、力の向きに物体が動かない時は、力が物体にする仕事は0となります。
エネルギー:仕事をする能力のことです。
力の向きに物体が移動する場合の仕事:物体に一定の力F〔N〕を働かせて、その力の向きにs〔m〕の距離だけ動かす時、力がする仕事WはW=Fsのようになります。縦軸に力、横軸に距離を取ったグラフを描いた時、仕事の量は一定の力F〔N〕と距離s〔m〕で囲まれる長方形の面積に等しくなります。
仕事の単位:ジュール(記号J)。1Nの力で物体を1m動かした時、力は1Jの仕事をしたと言います。
物体が動かない場合の仕事:ふりこの糸の張力、斜面をすべり落ちる物体に働く垂直抗力等、力の向きが物体の移動の向きと垂直である時には、その力がする仕事は0となります。
仕事の正負:力と移動の向きが同じなら、物体に正の仕事をしたことになり、力と移動の向きが逆なら、負の仕事をしたことになります。
力と移動の向きが異なる場合の仕事:物体に働く力Fと物体の移動の向きが異なる時、物体が移動する向きに沿った分力のみが仕事をし、移動する向きに垂直な分力は仕事をしていません。
2つ以上の力が働く場合の仕事:2つ以上の力が物体に働く場合、それらの合力がする仕事は、それぞれの力がする仕事の和に等しくなります。
仕事の原理:道具(滑らかな斜面、動滑車、てこなど)を使って仕事をする場合、道具の質量や摩擦を無視すれば、必要な仕事は道具を使わない場合に等しく、決して得をすることはありません。一般には道具を使って小さな力で物体を動かす場合、逆に移動距離が長くなります。すなわち、どのような道具や機械を使っても必要な仕事またはエネルギーは同じであり、道具や機械によって新しいエネルギーを作り出すことはできません。
仕事率:ある一定時間当たりの仕事の量で表される仕事の能率のことです。単位はワット(記号W)です。1sに1Jの仕事をする時、仕事率は1Wとなります。1〔W〕=1〔J/s〕、1000W=1キロワット(記号kW)。
運動エネルギー:運動している物体が持っているエネルギーのことです。エネルギーの単位として仕事の単位と同じジュール(記号J)を使います。一般に速さv〔m/s〕で運動している質量m〔kg〕の物体の持つ運動エネルギーEk〔J〕は、 E k = 1 2 m v 2 のように定義されます。
物体にした仕事と運動エネルギー:物体の持つ運動エネルギーは外から加えられた仕事と同じ量だけ変化します。初めの運動エネルギー+加えた仕事=現在の運動エネルギーとなります。
位置エネルギー:物体の位置によるエネルギーのことです。質量m〔kg〕の物体が基準面から高さh〔m〕の位置にある時、重力による位置エネルギーEp=mgh(gは重力加速度≒9.8m/s2)と表現されます。基準面は自由に決めることができ、物体がそれより低い位置にある時には高さh〔m〕は負符号となり、位置エネルギーも負符号となります。
弾性エネルギー:ばねの持つ弾性力による位置エネルギーのことです。ばねの力はフックの法則により、F=kx(k〔N/m〕はばね定数)であり、ばねを自然長からx〔m〕伸ばす時の仕事はばねに蓄えられた弾性エネルギーは E p = 1 2 k x 2 と表現されます。
保存力:物体をA点からB点まで動かす時、力のする仕事が経路に関係なく、2点の位置だけで決まるような場合の力のことです。重力やばねの弾性力は保存力であり、摩擦力や空気の抵抗などは物体を動かす経路の長さによって異なるので、保存力ではありません。
力学的エネルギー:運動エネルギーと位置エネルギーの和(Ek+Ep)を言います。
力学的エネルギー保存の法則:保存力だけが仕事をする物体の運動では、力学的エネルギーは一定に保たれます。

摂氏温度:セルシウス温度(記号〔℃〕)のことです。1気圧の下で、氷が溶けて水になる温度を0℃、水が沸騰して水蒸気になる温度を100℃とし、その間を100等分したものです。
絶対温度:単位はケルビン(記号K)です。セルシウス温度t〔℃〕と絶対温度T〔K〕の関係はT=t+273のように表されます。1Kの温度差は1℃の温度差に等しくなります。
絶対0度:-273℃=0K。これ以下の温度は存在しません。
熱運動:温度に関連した原子や分子の乱雑な運動のことです。
熱の移動:温度の異なる2つの物体が接触すると、熱運動のエネルギーは温度の高いものから低いものへ流れます。 熱量:温度差のある2つの物体の間に流れた熱の大きさのことです。熱はエネルギーの流れですから、ジュール〔J〕を単位として表します。
熱容量:ある物体を1K上昇させるのに必要な熱量のことです。単位はジュール毎ケルビン(記号〔J/K〕)です。
比熱:ある物質1g当たりの熱容量のことです。単位はジュール毎グラム毎ケルビン(記号〔J/g・K〕)です。
熱平衡:温度の違う2つの物体の間で熱の移動が起こり、温度が等しくなった状態を言います。
熱量の保存:温度の違う2つの物体の間で熱の移動が起こり、熱平衡に達した時、温度の高い物体から流れ出る熱量と温度が低い物体に流れ込む熱量が相等しいことを言います。
熱量保存の法則:高温物体と低温物体の間だけで熱量の移動が生じる時、全体の熱量は一定に保たれることを言います。
エネルギー保存の法則:どのような変換が起きても、エネルギーの総量は常に一定です。これは物理学で最も基本的で重要な自然法則であり、例えば力学的エネルギー間のみの交換では力学的エネルギー保存の法則となります。


【エネルギー効率の向上】
オイルショックの時も省エネが叫ばれましたが、東日本大震災をきっかけに節電やエネルギー効率の向上が真剣に取り組まれています。ガスを燃やしてガスタービンを回し、さらに熱で蒸気タービンを回すことで60%程度の高い発電効率を実現するコンバインドサイクル方式や、発電と共に発生した熱を冷暖房や給湯などに有効活用し、70~80%に達する高いエネルギー利用効率を実現するコージェネレーションシステムなどがそれです。都市計画においても、都市全体のエネルギー構造を高度に効率化したスマートシティが目指されています。