社会力アップ講座

地理的分野

1、知っておきたい時差の読み方

海外旅行や出張に出かける時、気になるのは「時差」ですね。海外に電話をかける時にも向こうが朝なのか、夜なのか、計算してからかけないと、相手に迷惑をかけることになります。
例えば、あなたが日本を1月1日午前0時に出発し、12時間かけてニューヨーク(西経75度)に到着したとすると、ニューヨークの日時は12月31日午後10時となります。前の日に着くなんて、何かすごいですよね。西経75度のニューヨークと東経135度の日本とでは、75+135=210で、210度の経度差があり、210÷15=14で、14時間の時差があることが分かります。12時間かけてニューヨークに到着した時の日本の時刻は1月1日午後0時。ニューヨークの方が時間が遅いため、ここから14時間前にさかのぼればいいのです。
あるいは、あなたがロンドンへ出張したとすると、日本にいる家族が1月1日午前0時を迎えた時、あなたがいるイギリスでの時刻は12月31日午後3時となります。イギリス(標準子午線は0度)と日本(標準子午線は東経135度)とでは経度差が135度なので、135÷15=9より、9時間の時差があることになります。イギリスは日本より西にあるので、日本の時刻から9時間遅らせればいいのです。

  【時差のポイント】
●地球は1日(24時間)で1回転(360度)するため、360÷24=15で、経度15度毎に1時間の時差が生じます。
●世界標準時はロンドンの経度0度(本初子午線)が基準で、ロンドンから見て、東半球は時刻が早く、西半球は時刻が遅いことになります。
●日本の標準時は兵庫県明石市の東経135度が基準です。
●日付変更線は太平洋上の東経・西経180度の経線にあり、日付変更線を西から東へ越えると日付が1日遅れ、東から西へ越えると日付が1日進みます。


2、世界の地形

 ニュースを見ていると、世界でも地震がよく起きていますが、日本のようにしょっちゅう地震が起きている地域と、滅多に起きない地域とがあるようです。その違いは一体どこにあるのでしょうか?

安定陸塊:地球上で最も古くからある陸地で、アフリカ大陸、アラビア半島、インド半島、オーストラリア大陸、南アメリカ大陸、南極大陸などがこれです。火山や地震が比較的少ない地域で、大平原になっている所が多く、鉄鉱石などの資源に恵まれています。
古期造山帯:古い地質時代に成長を終えた山脈で、低くなだらかな山脈が多く、アメリカ合衆国のアパラチア山脈、ロシアのウラル山脈、南アフリカのドラケンスバーグ山脈、オーストラリア大陸のグレートヴァイディング山脈などがこれです。石炭などの資源に恵まれていて、豊富で良質な大炭田が分布していることが多いのです。
新期造山帯:比較的最近の造山運動で形成された山脈で、現在も成長したり、地殻変動を受けている所が多く、高く険しい山脈が多いのです。日本列島を含む環太平洋造山帯とヒマラヤ=アルプス造山帯が代表で、火山や地震も多く、石油などの資源に恵まれています。


3、日本の地形

日本は国土の約4分の3が山地で、川は短く流れも急です。また、複雑に入り組んだ海岸地形を持ち、沖合には暖流と寒流が流れているという特徴があります。

扇状地: 河川が山地から平野部に出る谷口に開けた扇状の地形を言います。中央部(扇央)は伏流しやすく、水に恵まれないので、果樹栽培・桑畑に利用され、水の得やすい末端部(扇端)では水田として利用され、集落も立地しやすくなります。
氾濫原:河川の中流域で形成される平野のことです。河川両岸の微高地である自然堤防は水はけも良く、洪水の被害も受けにくいので、集落や畑に利用されています。自然堤防の外側の低地である後背湿地は主に水田に利用されていますが、近年では住宅地の開発も行われています。
三角州(デルタ):河口付近に土砂が堆積してできる三角形状の沖積平野です。稲作に適しており、日本では小規模ですが、ナイル川、ガンジス川、ミシシッピ川などの河口には大規模な三角州が形成されています。
海岸段丘:海岸に沿って発達する階段状の地形です。海底の隆起や海水面の低下などによって、浅く平坦な海底が陸上に現われて海食台となり、海岸線は波に砕かれて海食崖になり、この過程を繰り返して形成されます。
リアス式海岸:山地の沈降で生じた、のこぎり状の海岸線が特徴です。三陸海岸、志摩半島、若狭湾などがあります。


4、地図記号の読み方

主な地図記号をどこまで知っていますか?


5、日本の産業

産業上の特色には、「その国のかたち」が見て取れますね。日本の産業には一体、どんな特徴があるのでしょうか?

第1次産業:農林水産業。発展途上国は第1次産業人口比が多くなります。日本では約5%です。
第2次産業:鉱業、製造業、建設業。工業先進国は第2次産業人口比が多くなります。日本では約25%です。
第3次産業:卸売・小売業、サービス業、金融・保険業、不動産業、運輸・通信業、電気・ガス・水道業など。経済・文化水準が高い国は第3次産業人口比が多くなります。日本では約70%です。
産業構造の高度化:産業の比重が第1次から第2次、第2次から第3次へと移行していくこと。ペティ・クラークの法則とも言います。
経済のサービス化:第3次産業の比重の高まりのことを言います。
経済のソフト化:モノ(ハード)それ自体よりも、モノに付加されるソフトの比重が高まること。
産業の空洞化:1985年のプラザ合意をきっかけに円高が急速に進み、輸出依存の日本経済は大きな打撃を被ったため、企業の中には円高の影響を回避するために生産拠点を海外に移すものも多く出ました。雇用吸収力が大きい基幹的製造業の生産拠点(工場など)が国外に移転すると、国内の雇用機会が減少し、技術的進歩が停滞することになります。
労働集約型産業:労働集約的で、あまり高度な技術を必要としない産業。縫製品や各種の組み立て品を作る機械工業は、労働力が豊富で安価な所に立地します。
知識集約型産業:研究開発従事者比率が高い高付加価値型産業の総称。コンピュータ、航空機、IC産業や情報処理サービス、・ソフトウェアなどの知識産業が典型です。


6、日本の農林水産業

農業、特にコメ作りは長らく日本の基幹産業でした。今では大きな曲がり角にさしかかっています。また、日本は海洋国家で水産資源に恵まれているのですが、水産業も曲がり角にさしかかっています。

促成栽培:温室などを使って農産物の生育を早め、出荷時期をずらす栽培方法。高知平野や宮崎平野でのピーマン、きゅうりが有名です。
園芸農業:都市への出荷を目的として、果樹・花卉などを集約的に栽培する方法。大都市近郊で行われる場合、特に近郊農業と言います。
高冷地農業:冷涼な気候を利用して行われる農業。レタス、キャベツ、はくさいなど、中央高地での高原野菜栽培が有名です。
遠洋漁業:遠方の漁場に出漁して漁を行う漁業。サケ・マス・マグロなどを獲ります。
沖合漁業:日帰り可能な海域で行う漁業。イワシ・アジ・サバなどの大衆魚を獲ります。
沿岸漁業:海岸近くで行われる漁業。タイや大衆魚などを獲ります。
養殖漁業:人工いけすなどで稚魚や稚貝を育て、成長させてから獲る漁業。遠洋漁業・沖合漁業の衰退が著しい中、その重要性が増しています。
栽培漁業:人工的にふ化させた稚魚などを海に放流し、成長させてから獲る漁業。
排他的経済水域:沿岸国は200カイリ範囲内では海洋資源を排他的に利用できます。これによって、海洋の漁業資源を独占できる漁業専管水域を設定する国が多くなり、日本の漁獲量が急減した原因の1つです。


7、日本の資源・エネルギー

日本は資源小国なので、資源・エネルギーの確保は死活問題と言えます。

発電割合:アメリカ・ドイツ・日本などは火力中心。フランスは原子力中心。カナダなど森林の多い国は水力が中心になります。
エネルギー革命:日本のエネルギー供給は戦前から石炭が中心でしたが、1960年代にエネルギー革命が起こり、その割合が低下し、石油・天然ガスへと移行しました。
石油危機:1970年代に2度の石油危機(オイル=ショック)が起こり、石油依存の体質が改められて、原子力の比重が高まりました。現在ではクリーンな風力、地熱、太陽光、太陽熱、バイオマスなどの新エネルギーの開発、普及も進められている。
日本の石炭輸入相手国:オーストラリア、インドネシアなど。
日本の原油輸入相手国:サウジアラビア、アラブ首長国、カタールなど。
日本の天然ガス輸入相手国:マレーシア、オーストラリア、カタール、インドネシアなど。
日本の鉄鉱石輸入相手国:オーストラリア、ブラジルなど。
日本の銅鉱輸入相手国:チリ、インドネシア、ペルーなど。


8、貿易

貿易とは国と国との輸出・輸入の関係のことです。貿易上の特色を見ることで、他の国々とどのような関係を築いているかが良く分かります。

国際分業:先進国の製品と途上国の原料・農産物の関係のような垂直的分業と、工業国間の交換のような水平的分業とがあります。
国際収支:一般に先進国では経常収支は黒字で、資本収支は赤字となります(海外への投資が多い)。アメリカは例外的に経常収支が赤字で、資本収支が黒字ですが、これは巨大なアメリカ市場への輸出が非常に多く、海外からの投資も盛んなためです。
加工貿易:原料を輸入して、製品に加工して輸出します。資源が乏しい日本はこれで付加価値を高め、利益を生み出していったのです。
日本の最大の貿易相手国:かつてはアメリカ合衆国でしたが、現在では輸出入共に中国が最大です。製造コストが安い現地工場で一括生産して、日本に輸入するという貿易構造に変わってきました。

【各国からの特徴的輸入品】

フランス ぶどう酒。 オーストラリア 石炭、鉄鉱石、液化天然ガス、肉類。
イタリア バッグ類、衣類。 タイ 天然ゴム、魚介類。
スイス 医薬品、時計・同部品。 フィリピン 果実。
アメリカ合衆国 機械類、科学光学機器、医薬品。 インドネシア 液化天然ガス、原油、石炭、えび。
カナダ 木材。 マレーシア 液化天然ガス。
ブラジル 鉄鉱石、コーヒー、アルミニウム。 ヴェトナム 衣類、原油、魚介類。
南アフリカ 白金、鉄鉱石、パラジウム。

9、公害

日本は敗戦しましたが、戦後の高度経済成長を通して先進国の仲間入りを果たしました。その一方で大きな問題として浮上してきたのが、公害問題でした。これは今まさに高度経済成長期にある中国などが直面している課題でもあります。

足尾銅山鉱毒事件:栃木県足尾銅山の廃水に含まれる銅・硫酸・亜鉛などの鉱毒によって、渡良瀬川流域住民に大きな被害を与えた事件。明治中期に発生した日本の公害問題の原点とされ、衆議院議員田中正造が足尾銅山鉱毒事件を国会で追及しました。
四大公害病:新潟水俣病(新潟県阿賀野川流域、有機水銀)、四日市ぜんそく(三重県四日市市、大気汚染)、イタイイタイ病(富山県神通川流域、カドミウム)、水俣病(熊本県水俣湾周辺、有機水銀)。
公害対策基本法:国民の健康と生活環境保全を目的に制定された法律。1967年成立。
環境基本法:公害対策基本法に代わって制定された法律。1993年成立。公害対策基本法に比べて適用範囲が広く、地球環境問題に対応する内容となっている。
環境庁:公害防止や自然保護など公害対策を一元化するために1971年に発足。2001年に環境省に昇格しました。 PPP(Polluter Pays Principle、汚染者負担の原則):環境汚染の防止や被害者救済の費用は汚染原因者が負担すべきとする原則。1972年にOECD(経済協力開発機構)で示されました。
環境アセスメント(環境影響評価):開発の計画・策定にあたって、環境への影響を事前に予測・評価し、環境破壊を未然に防止しようとすること。日本では1997年に環境アセスメント法(環境影響評価法)が施行されました。


10、環境問題

公害問題は加害企業が明確ですが、環境問題はそういうわけにはいきません。地球規模の取り組みをしない限り、解決することができないのです。

国連人間環境会議:1972年、スウェーデン・ストックホルム。スローガンは「かけがえのない地球」(Only One Earth)です。人間環境宣言が出され、国連環境計画(UNEP)が設立されました。
オゾンホール:フロンガスなどの使用により、空気中のオゾン濃度が減り、オゾン層の一部が穴の開いた状態になること。極地方で観察され、皮膚がんの増加が懸念されています。
モントリオール議定書:1987年。オゾン層保護条約議定書のことで、フロンガス生産全廃が取り決められました。1989年はこれを引き継いだヘルシンキ宣言が出されています。
国連環境開発会議:1992年、ブラジル・リオデジャネイロ。地球サミットとも言います。スローガンは「持続可能な開発」(sustainable development)です。地球と開発に関するリオ宣言、気候変動枠組条約(温暖化防止条約)、生物多様性条約、アジェンダ21など打ち出されました。
地球温暖化:石油・石炭などの化石燃料の大量消費により、二酸化炭素などの温室効果ガス濃度が上昇し、地球の平均気温が上昇すること。
ヒートアイランド:大都市の市街地での最低気温の上昇、温暖化。コンクリート構造物の増加による熱容量の増大、自動車の排気ガス、エアコンの室外機からの排熱など、熱源の増加が原因と考えられています。
酸性雨:pH5.6以下の雨。硫黄酸化物・窒素酸化物などが原因です。
エルニーニョ現象:ペルー沖など東太平洋の赤道付近で海水温度が上昇すること。世界的異常気象の原因とされています。


11、日本のすがた①

日本は島国で、排他的経済水域まで考えると、世界で第6位の海洋国家なのです。

日本の北端:択捉島。国後島、歯舞群島、色丹島と共に北方領土と呼ばれます。
日本の南端:沖ノ鳥島。意外なようですが、日本の最南端は沖縄ではなくて、東京都です。水没の恐れがあるため、巨額の費用をかけて護岸工事が行われました。日本の排他的経済水域(200カイリ)の縮小を防ぐのが目的です。
日本の東端:南鳥島。これも日本の最東端は北海道ではなくて、東京都です。
日本の西端:与那国島。沖縄県です。
プレート:地球の表面を覆う十数枚の固い岩盤のことで、その下には流動性のあるマントルがあり、この上にプレートが乗って移動しています。プレートの境界部分では火山や地震活動が活発になると考えられています。日本周辺には何と、太平洋プレート、北アメリカプレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートの4つがあり、火山と地震の多発地帯となっていることが分かります。
海流:暖流として日本海流(黒潮)と対馬海流、寒流として千島海流(親潮)とリマン海流がある。
火山帯:千島・那須・鳥海・富士・乗鞍火山帯を東日本火山帯、白山・霧島火山帯を西日本火山帯と言います。


12、日本のすがた②

それでは日本各地の特徴を見てみましょう。

九州地方:シリコンアイランド(半導体生産が盛ん)、有明海(のりの養殖、諫早湾干拓問題)、シラス台地(鹿児島)、屋久島(世界自然遺産)。
中国地方:鳥取砂丘(日本最大)、広島湾(かきの養殖)、秋吉台(カルスト地形)。
四国地方:讃岐平野(ため池)、愛媛(ミカン栽培)。
近畿地方:若狭湾・志摩半島(リアス式海岸)、阪神工業地帯(繊維が特徴)。
中部地方:中京工業地帯(工業出荷額最大)、日本アルプス(飛騨・木曽・赤石山脈)、高冷地農業(八ヶ岳・浅間山麓)。
関東地方:関東ローム(関東台地を覆う火山灰の層)、京浜工業地帯(総合工業地帯)。
東北地方:やませ(冷害)、南部鉄器(盛岡)。
北海道地方:北方領土(国後島、択捉島、色丹島、歯舞群島)、知床(世界自然遺産)。