英語力アップ講座

2、名詞・代名詞・冠詞

名詞とは、端的に言えば、「ものの名前」と言ってよいでしょう。幼児の言語習得過程を見ても、最初に覚えるのは「ものの名前」です。それは「わんわん」「ブーブー」であったりするのですが、間違っても「速い」とか、「走っている」とかとしゃべり始める子供はいません。そうして、1語発話→2語発話→文章表現と、だんだん表現が高度化してきます。つまり、言語習得は名詞から始まると言ってもよいでしょう。この「もの」は当然、「人、物、事」など幅広くとらえることができます。三重苦(見えない・聞こえない・しゃべれない)のヘレン・ケラーに対して、サリバン先生が水をヘレンの手にかけては手のひらに「水(water)」と書き、ある日、その意味するところを悟ったヘレンが驚きの声を上げたことは有名な話です。「ものには名前がある!」ということです。そういえば、『旧約聖書』創世記にも、神がアダムに命じて、あらゆるものに名前をつけさせた、という記述が出てきます。「ものに名前がある」ということは何でもないことのようですが、その「もの」をはっきりと認識し、自らの意識下に置いたということを意味します。
ところで、日本人なら虹の七色(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)と普通に言いますが、ネイティブ・アメリカンのある部族では虹の色を表わすのに3色の言葉しかないそうです。この部族の人達には虹は3色に見えているので、他の4色は認識されておらず、意識の中に入っていないということです。さらに、日本語では水と湯は区別されます。そして、温度や感覚によって、冷たい水・熱いお湯・沸いているお湯等と言ったりしますが、英語では同じ「もの」をcold water, hot water, boiling waterと表現し、全てwaterとしてとらえていることが分かります。つまり、水=waterではないのです。これは認識・意識の違いであり、それが表現されると概念の違いとなるわけです。したがって、言語が違えば、それによって認識・意識も変わり、概念も変わってくるので、当然、発想形式や思考様式も変わってくるわけです。


(1)可算名詞

 英語では日本語に比べて数の意識が非常に強く、単数なのか複数なのかを常に考えています。例えば、日本語で「太郎君には兄弟がいます」と言えますが、英語ではbrotherなのかbrothersなのか、区別しなければ表現できません。こういった数えられる名詞を可算名詞と言い、具体的には普通名詞と集合名詞の2つがあります。

①普通名詞:同じ種類の人、物、事に共通に適用できるものを言います。名詞の大部分は普通名詞で、普通名詞を文中で用いる時には、a pen, my penのように、冠詞(a, an, the)やその名詞を限定する語(my, this, that等)をその前に付けます。ここで重要なことは複数形の作り方を押さえることです。これには規則的変化と不規則的変化があり、/s//z//iz/の3つの発音が出てきます。

(1)複数形の作り方(規則的変化)

複数形の作り方 単数形の語尾 単語例
-sを付ける 下記4パターン以外全部 books, cups, dogs, maps, hats, roses, apples, windows, doors
-esを付ける s, sh, ch, x buses, classes, glasses, dishes, benches, churches, watches, boxes
子音字+o heroes, potatoes, tomatoes
【要注意】子音字+oの例外
pianos, photos, zeros, dynamos, solos
語尾のyをiに変えて-esを付ける 子音字+y cities, babies, lilies, ladies, families
【要注意】母音字+yは-sを付けます。
boys, days, monkeys, ways
語尾のf, feをvに変えて-esを付ける f, fe leaf→leaves, life→lives, thief→thieves wife→wives, wolf→wolves
【要注意】f, feの例外
roofs, beliefs, safes, chiefs, cliffs, gulfs

(2)複数形の作り方(不規則的変化)
複数形の作り方
母音が変わる man→men, woman→women, foot→feet, tooth→teeth, mouse→mice
語尾に-enを付ける ox→oxen, child→children
単数形と複数形が同形 sheep, deer, trout, series, species, Japanese
外来語の複数形をそのまま用いる oasis→oases, basis→bases, crisis→crises, datum→data

②集合名詞:同一の種属に属する人や事物の集合体を表す名詞を言います。集合体を1つの単位と見る場合は単数扱い、集合体を構成する個々の要素を重視する場合には複数扱いにしますが、常に単数扱い、常に複数扱い(衆多名詞)する場合もあります。


(2)不可算名詞

①固有名詞:人・物・場所等に固有の名前を表す名詞を言い、常に大文字で書き始めます。
②物質名詞:物質や材料の名前を表す名前を言います。物質名詞の量を表す語・句として次のようなものが用いられます。

不定の量を表す語 some, any, much, (a) little, a lot of
一定の量を表す語句 a cup of, a glass of, a piece of, a sheet of, a pound of, a handful of
喫茶店でコーヒーを2杯注文する時、Two cups of coffee, please.が正しいのですが、実際にはTwo cofees, please.という言い方もあります。moneyも元々砂金に由来するので数えられませんが、coin(硬貨)やbill(札)は数えられます。


③抽象名詞:抽象概念・性質・行為・状態等を表す名詞を言います。
例:wise→wisdom(知恵), free→freedom(自由), kind→kindness(親切), friend→friendship(友情), agree→agreement(同意), punish→punishment(罰), discover→discovery(発見), brave→bravery(勇敢)


(3)代名詞

「もの(人・物・事)の名前」が名詞でしたが、あるものについて述べる時、常にその名前をそのまま呼ぶということは、実は意外に不便なことでもあるのです。それを示す典型が落語に出て来る「寿限無」の小話ですが、これは名前がもっと短くても一緒です。例えば、「山田太郎はりんごが大好きです」「山田太郎は本屋に行ってきます」「山田太郎はもう寝ます」といった簡単なことを言うだけでも、いちいちまどろっこしいことが分かります。ここで「ぼく」「私」「オレ」といった言葉があれば、どれほどスッキリするでしょう。これが代名詞というものです。すなわち、「あるものの名前の代わりをする名詞」ということになります。
ここで注意しなければならないのが人称・性・数・格の概念です。人称には1人称(私)・2人称(あなた)・3人称(その他)の3つがあり、性では男性・女性・中性の3つ、数は単数・複数の2つ、格は主格(~は、~が)・所有格(~の)・目的格(~に、~を)の3つがあります。これらは代名詞の中でも人称代名詞の理解に欠かせない概念です。


【名詞の性】
 日本語では文法上、性の区別はそれほど厳密ではありませんが、欧米語では性の意識がかなり厳密で、時として自然の性と無関係のことすらあるのです。例えば、ドイツ語では太陽は女性名詞、月は男性名詞であり、スペイン語でも家やゴキブリは女性名詞、川や港は男性名詞となっているのです。英語ではありがたいことに自然上の性と文法上の性が全て一致しているので、常識的にすぐ判断できます。
また、最近ではpolitical correctness(政治的公正、略称PC)と言って、性差別を避ける表現を使う傾向もあります。
Miss, Mrs.→Ms.(女性への敬称) 
stewardess→flight attendant(客室乗務員)
fireman→firefighter(消防士) policeman→police officer(警官)
chairman→chairperson(議長) businessman→businessperson(実業家)


①人称代名詞

単数形 複数形
主格 所有格 目的格 主格 所有格 目的格
1人称 I my me we our us
2人称 you your you you your you
3人称 男性 he his him they their them
女性 she her her
中性 it its it

(1)「一般の人々」を表わすwe, you, they(総称用法)
 weは話者自身も含めて一般の人々を表し、youは漠然と相手に話して聞かせる気持ちで用いられ、最も口語的です。theyは話者と相手を除いた第三者としての一般の人々を表し、文語ではoneも使われます。

(2)時間・天候・距離等を表すit
 itは時間・天候・距離・明暗・寒暖や漠然とした状況を表す文で、主語として用いられます。
It is fine today.(今日はいい天気です。)


②所有代名詞
 「代名詞の所有格+名詞」の代わりをするものが所有代名詞(~のもの)です。mine, ours, yours, his, hers, theirsがあります。人称代名詞の所有格はa, an, the, this, that, some, anyなどと並べて用いることはできないので、例えば「私の友人」と言う場合にはa friend of mineのように、「of+所有代名詞」の形を取ります。
my friend=その時の状況から決まってくる特定の友人
。 a friend of mine=漠然と何人かいる中の不特定の友人。


③再帰代名詞
 人称代名詞の所有格または目的格に-self(単数), -selves(複数)をつけたものを再帰代名詞と言い、「~自身」の意味を表わします。myself, ourselves, yourself, himself, herself, itself, themselvesがあります。主格と目的格は同形で、所有格はありません。「~自身の」という意味は、my own(私自身の)のように「所有格+own」の形で表します。
by oneself (一人で)=alone, for oneself(独力で)=without help
in itself.(本来),of itself(ひとりでに)
between ourselves(内緒の話だが、ここだけの話だが)
keep~to oneself(~を秘密にしておく、自分の胸の中にしまっておく)
come to oneself(正気づく), beside oneself(我を忘れる、逆上する)
devote oneself to(~に献身する、我が身を顧みない)
help oneself to(~を自由に取って食べる)
seat oneself(座る)


④指示代名詞
 this(これ), these(これら), that(あれ), those(あれら)等があります。


⑤不定代名詞
不特定の人や物、数量を漠然と表す代名詞のことを言います。one (1つ), another(もう1つのもの), other(ほかのもの), all(全て), some (多少、いくぶん), any(何でも、誰でも、どれでも), none (いずれも~ない)等があります。ちなみに人称代名詞itは同一の物を指しますが、不定代名詞oneは同種類のものを指していることに注意しましょう。
one~the other(2つのうち:一方は~、もう一方は…)
the one~the other…(前者は~、後者は…)=the former~the latter…
one~the others(3つ以上で:1つは~、残り全部は…)
some~others(~するものもあり、…するものもある)
one~another(3つ以上のうち:1つは~、他の残りの中の1つは…。さらに3番目について述べる時は、one~another…the third~となります)
A is one thing and B is another.(AとBとは別のことである。)


【格に見る英語の単純さ】
 格とは文中の他の語句との関係を示す語形のことで、サンスクリット語には8つ、ロシア語には6つ、ラテン語には5つ、ドイツ語には4つ、英語には3つの格変化があります。すなわち、印欧語族の中でも西へ行くほど格変化の数が少なくなっていき、単純化していったことが分かります。複雑に思える英文法も、実は印欧語族の中では単純な方なのです。


(4)冠詞

 冠詞とは名詞の頭にくっつくもので、日本語にはない品詞なのでちょっとやっかいです。この中に数(単数か複数か)とか特定の名詞か不特定の名詞か(theが付くか付かないか)などといった情報がつまっているのですが、これは単なる名詞の付属物(形容詞の一種)などではなく、英語の論理そのものを表わしているとさえ言われています。例えば、I ate a…a….a…hot dog!とあれば、「何食べたんだっけ?えーと、こんなの1つ食べたな、何て言うんだっけ?えーと、えーと、そうだ、ホットドッグだ!」ということになります。言いたい内容がまずあって、それは1個で(数の認識、aで示される)、それから名前が特定されるというプロセスが出てきます。これがI ate the hot dog.となれば、何か特定のホットドッグということになり、それは話し手・聞き手がすぐに分かるものであるはずです。例えば、それまでの会話で「実はジェーンにホットドッグをもらったんだよ」といった内容があれば、何か不特定のホットドッグ1個を食べたのではなくて、「例の、あのホットドッグを食べたんだよ」という意味になります。
 実は英語が相当できると言われる人でも、最後まで間違えやすいのは冠詞や単数・複数の問題だとされます。これは単に単語・熟語を知っているとか、文法・語法に通じているという問題ではなくて、感覚そのものが問題になってくるからです。冠詞には不定冠詞a(母音の前はan)、定冠詞the(/ðə/、母音の前は/ði/)の2つがあり、a=one、the=thatと理解しておけば大丈夫です。


①the+普通名詞=抽象名詞
The pen is mightier than the sword.(文は武にまさる。)


②種類全体を表す表現:不定冠詞、定冠詞、無冠詞の複数形を使って、3通りに表現できます。
An owl (The owl, Owls) can see in the dark.(ふくろうは暗がりでものが見える。)


(5)数詞

①基数と序数:基数は個数を表し、序数は順序を表します。

基数 序数 基数 序数
1 one the first 11 eleven the eleventh
2 two the second 12 twelve the twelfth
3 three the third 13 thirteen the thirteenth
4 four the fourth 14 fourteen the fourteenth
5 five the fifth 15 fifteen the fifteenth
6 six the sixth 16 sixteen the sixteenth
7 seven the seventh 17 seventeen the seventeenth
8 eight the eighth 18 eighteen the eighteenth
9 night the ninth 19 nineteen the nineteenth
10 ten the tenth 20 twenty the twentieth
*アンダーラインの単語のスペルに注意しましょう。


基数 序数 基数
21 twenty-one the twenty-first 1000 thousand
22 twenty-two the twenty-second 1万 ten thousand
30 thirty the thirtieth 10万 one hundred thousand
40 forty the fortieth 100万 million
50 fifty the fiftieth 1千万 ten million
60 sixty the sixtieth 1億 one hundred million
70 seventy the seventieth 10億 billion
80 eighty the eightieth 100億 ten billion
90 ninety the ninetieth 1千億 one hundred billion
100 one hundred the one hundredth 1兆 trillion


②年月日
1978=nineteen seventy-eight
2000=two thousand
2003=two thousand three, twenty oh three

1月 January 始めと終りを司る神Janus(ヤヌス)の月。
2月 February 古代ローマの浄罪(Februa)の月。
3月 March ローマ神話の軍神Mars(マルス)の月。 
4月 April 愛と美の女神Aphrodite(アフロディテ)の月。
5月 May ローマ神話の成長の女神Maia(マイア)の月。
6月 June ローマ神話のユピテルの妻Juno(ユノ)の月。 
7月 July Julius Caesar(ユリウス・カエサル)の月。
8月 August 初代ローマ皇帝Augustus(アウグストゥス)の月。
9月 September 7番目(ラテン語でSeptem)の月。
10月 October 8番目(ラテン語でOcto)の月。
11月 November 9番目(ラテン語でNovem)の月。
12月 Decemmber 10番目(ラテン語でDecem)の月。
 こうして見ると、9月以降、2か月ずれていることが分かりますね。これはユリウス暦を作ったユリウス・カエサルとその養子であるオクタウィアヌス(アウグストゥス、尊厳者)の誕生月をそれぞれ月名に入れたためとも言われています。ちなみに、「1月に」のように言う時はinを付けて、in Januaryとします。


日曜日 Sunday Sun(太陽)の日。
月曜日 Monday Moon(月)の日。
火曜日 Tuesday 北欧神話の軍神チュール(ティル)の日。
水曜日 Wednesday 北欧神話の主神オーディンの日。
木曜日 Thursday 北欧神話の雷神トールの日。
金曜日 Friday 北欧神話の愛と美と豊穣の女神フレイアの日。
土曜日 Saturday ローマ神話の農耕神サトゥルヌスの日。
 こうして見ると、英語にはキリスト教的要素は言うまでもありませんが、ギリシア・ローマ的要素、ゲルマン的要素も色濃く残っていることがうかがえますね。ちなみに、「月曜日に」のように言う時はonを付けて、on Mondayとします。