数学力アップ講座

18、場合の数と確率

生命保険会社が保険料を決める際に使う年齢別・性別の死亡率・生存率は、大数の法則に基づいています。例えば、サイコロを転がすといろいろな数字が出て、最初のうちは特定の数字が多く出ることもありますが、何万回、何十万回とやっているうちに、1から6まで、ほぼ満遍なく出てくるようになるのです。つまり、1回1回を見れば、偶然の結果にすぎないように見えるものも、長い間やっているうちに、一定の傾向、一定の法則があることが見えてきて、このような法則を大数の法則と呼びます。考えてみれば、1人1人は病気で亡くなったり、事故で亡くなったりして、相互に申し合わせているわけはないのに、全体としては確率論的な動きをして、毎年、一定の割合で死亡するというのも不思議な話ですね。


試行:さいころを投げることのように、同じ条件の下で何回も繰り返すことができ、しかもどの結果が起こるかが偶然に決まるような実験や観測などを言います。
事象:試行の結果として起こる事柄のことです。事象を表わすのにA, B等の文字を用います。一般に、ある試行において、起こり得る全ての結果が同じように起こると期待できる時、これらの起こり得る全ての結果は同様に確からしいと言います。
樹形図:起こり得る全ての結果を調べるために描く、木の枝の形をした図のことです。ポイントは場合の数を「もれ」や「重複」がないように数え上げるということになります。
事象の確率:ある試行において、起こり得る全ての結果がN個あり、その各々は同様に確からしいとし、この中で事象Aが起こる場合の数がa個の時、 a N を事象aの確率と定め、P(A)で表します(PはProbabilityの頭文字)。
  P(A)= a N 事象 A の起こる場合の数 起こり得る全ての場合の数

全事象:一般に、ある試行において、起こり得る結果の全体を集合Uで表します。Uで表わされる事象を全事象と言います。
(例)1個のさいころを投げる時、この試行の結果全体は集合U={1、2、3、4、5、6}で表されます。この時、奇数の目が出る事象A、2の目が出る事象BはUの部分集合として、A={1、3、5}、B={2}のように表すことができます。
根元事象:Uの1個の要素だけからなる集合で表される事象のことです。全ての事象はいくつかの根元事象からなります。例えば、さいころを投げる試行の根元事象は{1}、{2}、{3}、{4}、{5}、{6}の6個です。
空事象:根元事象を1つも含まないものも事象と考え、これを空事象と言い、空集合で表わします。空事象は決して起こらない事象です。
和事象:一般に事象Aまたは事象Bが起こる事象をAとBの和事象と言い、和集合A∪B(AカップB、AまたはB)で表されます。
積事象:一般に事象Aと事象Bが共に起こる事象をAとBの積事象と言い、共通部分(積集合)A∩B(AキャップB、AかつB) で表されます。
排反事象:事象Aと事象Bが同時に起こることが決してない時、すなわちA∩B =φである時、事象Aと事象Bは互いに排反である、あるいは排反事象であると言います。
確率の基本性質:
(1)任意の事象Aに対して 0≦P(A)≦1
(2)全事象Uの確率 P(U)=1
(3)空事象φの確率 P(φ)=0
(4)A, Bが排反事象の時 P(A∪B)=P(A)+P(B)
確率の加法定理:確率の基本性質(4)を加法定理と言い、3つ以上の排反事象に対しても成り立ちます。一般に事象Aと事象Bが互いに排反でない時、次の式が成り立ちます。
  P(A∪B)=P(A)+ P(B)-P(A∩B)
余事象:事象Aに対して、「Aが起こらない」という事象をAの余事象と言い、で表します。余事象の確率は次のようになります。
  P( A )=1-P(A)


【ダランベールの誤り】
16世紀のヨーロッパでは、「どうしたら賭け事に勝つことができるか」ということを研究する人々が現われました。この研究が確率の考えを誕生させるきっかけになったと言われています。
フランスの有名な数学者であり、物理学者でもあるダランベールは、1枚の硬貨を2回投げる時、起こり得る全ての場合を、①2回とも表、②1回が表で1回が裏、③2回とも裏、と考え、それぞれが 1 3 の確率で起こると考えました。この考えは「ダランベールの誤り」と言われています。
実際には、同様に確からしい、全ての起こり得る場合を考えなくてはいけませんので、(1)1回目が表で、2回目が表、(2)1回目が表で、2回目が裏、(3)1回目が裏で、2回目が表、(4)1回目が裏で、2回目が裏、という4パターンが考えられます。したがって、ダランベールの考えた①2回とも表が起こる確率は 1 4 、②1回が表で1回が裏が起こる確率は 2 4 1 2 、③2回とも裏が起こる確率は 1 4 、ということになります。