数学力アップ講座

11、平面図形の基本

「図形」は古代エジプトやバビロニアなどで測量の必要性から生まれましたが、これを「幾何学」にまで高めたのが古代ギリシア人でした。哲学で有名なプラトンの学校アカデメイアの入り口には、「幾何学を学ばざる者、この門を入るべからず」と掲げられていたと言いますし、アレクサンドリアで幾何学を教えていたギリシア人数学者ユークリッド(エウクレイデス)は「幾何学の父」と呼ばれていますが、エジプトのプトレマイオス王が幾何学のあまりの難しさに「何とかもう少し手軽に学ぶ方法はないのか」尋ねると、「幾何学に王道はありません」と答えたことで知られています。この伝統は中世ヨーロッパに伝えられて、「三学」(文法・修辞学・論理学)と「四科」(算術・幾何学・音楽・天文学)からなる「七自由科」の1つに組み込まれ、さらに七自由科が近代ヨーロッパの「教養」(リベラル・アーツ)の源泉になっていくと、回り巡って近代日本の大学にも「一般教養科目」として導入されることになるのです。

直線:2点A, Bを通る直線を直線ABと言います。直線ABのうち、AからBまでの部分を線分ABと言い、線分ABをBの方に限りなく真っ直ぐ伸ばしたものを半直線ABと言います。
平行:2直線AB, CDが平行であることをAB//CDと書きます。2直線が平行である時、一方の直線のどこに点を取っても、その点と他方の直線との距離は等しいので、この距離を平行な2直線間の距離と言います。
垂直:2直線AB, CDが垂直であることをAB⊥CDと書きます。
垂線(点Pから直線Lへの垂線):コンパスを使って作図します。この時、垂線と直線Lとの交点をHとすると、線分PHの長さを点Pと直線Lの距離と言います。
垂直二等分線(線分ABの垂直二等分線)コンパスを使って作図します。
角:半直線OA, OBによって作られる角を角AOBと言い、∠AOBと書きます。
角の二等分線(∠AOBの二等分線)コンパスを使って作図します。
対頂角: 2直線が交わる時、向かい合っている角を対頂角と言います。対頂角は等しくなります。
同位角:2直線に1つの直線が交わる時、同じ位置にある角を同位角と言います。2直線が平行であれば同位角は等しくなり、逆に同位角が等しければ、2直線は平行になります。
錯角:2直線に1つの直線が交わる時、はす向かいの位置にある角を錯角と言います。2直線が平行であれば錯角は等しくなり、逆に錯角が等しければ、2直線は平行になります。

弧と弦:円周上の点Aから点Bまでの部分を弧ABと言い、AB(ABの上に弧の記号を入れます)と表わします。また、線分ABを弦ABと言います。
接線:直線Lと円Oが接している(1点だけを共有している)時、Lを円Oの接線、点Aを接点と言います。円の接線はその接点を通る半径に垂直です。

おうぎ形:半径r、中心角x°とすると、 おうぎ形 円全体 x 360 をかけることで弧の長さやおうぎ形の面積を求めることができます。
(1)弧の長さ:L=2πr(円周の長さ)× x 360 となります。
(2)面積:S=πr2(円全体の面積)× x 360 1 2 Lr(弧の長さ×半径)となります。

点の集合:直線や曲線は点が集まってできた図形と見ることができます。一般にある条件を満たす点全体が作る図形を、この条件を満たす点の軌跡と言います。
(1)平面上で点Oからの距離が一定である点の集合
 点Oを中心とする円(円周)になります。
(2)2点からの距離が等しい点の集合
 2点を結ぶ線分の垂直二等分線になります。
(3)平面上で直線Lからの距離が一定である点の集合
 直線Lの両側にあって平行な2つの直線になります。
(4)角の2辺からの距離が等しい点の集合
 角の二等分線になります。

線対称:ある直線を折り目にして折り返すとぴったりと重なる図形を線対称な図形と言い、折り目の直線を対称軸と言います。
点対称:1点を中心として180°回転させた時、元の図形にぴったりと重なる図形を点対称な図形と言い、中心となる点を対称の中心と言います。
平行移動:図形を一定の方向に一定の長さだけずらして、その図形を移すことです。対応する点を結ぶ線分の長さは全て等しく、平行です。
対称移動:図形を1つの直線Lを折り目として折り返して、その図形を移すことです。対称軸は対応する2点を結ぶ線分の垂直二等分線となります。
回転移動:図形を1つの点Oを中心として一定の角度だけ回して、その図形を移すことです。回転運動の中で特に180°の回転運動を点対称移動と言います。対応する2点の回転の中心からの距離は等しくなります。


【学問は何のためにやるのか?】
数学を勉強していると、「一体、こんなこと、何の役に立つんだ!」という疑問を感じない人がいないでしょう。ちなみに古代において幾何学を大成したユークリッドは、ある学生が「こんなことをして、何の得になるのですか?」と質問してきたのに対し、「この学生に金をやれ。何か得にならないと、勉強しないらしいからな」と言って、追い出してしまいました。つまり、真理探究のための学問であって、実利追求のためではないということです。あるいは、ある数学者も「何のために数学を研究しているのですか?」と聞かれて、「人類への貢献です!」と胸を張って答えたそうですが、彼らの胸の内には共通するものがありそうですね。