小学校の「算数」の時代に、是非とも伸ばしておきたいものが「計算力」「暗算力」「数の感覚」です。これらは中学校以上で「数学」を学ぶようになった時、目に見えない「土台」になってくれるものです。
ところで、脳科学や認知心理学の発達で明らかになってきたことですが、暗算などの簡単な情報処理を行う際に、頭の中で数字を思い浮かべて固定したり、計算した結果をちょっと横において、次の作業をした後にもう1回使ったりするのですが、こういった作業を行う場を「ワーキングメモリー」と言います。これは「超短期記憶」の一種ですが、どうやら、いわゆる「頭のいい人」「頭の回転が速い人」はこの「ワーキングメモリー」が発達しているらしいのです。何人かでレストランに食事に行って、「全部で会計いくらになるんだっけ?」と言えば、さっと暗算して「~んっと、7,820円かな」などと答えてくれる人がいたりしますが、こういう人達のことですね。「4人だと1人いくら?」「えーっと、1,955円かな。半端だから2,000円ずつ出すよ」といった感じです。逆に言えば、日頃から暗算を心がけたり、ちょっとした考えを頭の中で張り巡らせていくことは「ワーキングメモリー」の発達を促すということですね。
展開:整式の積を計算して整理することを整式の展開と言います。
乗法公式:展開において基本公式を覚えておくと、計算に応用できます。
(1)(a+b)2=a2+2ab+b2
(2)(a-b)2=a2-2ab+b2
(3)(a+b)(a-b)=a2-b2
(4)(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab
(5)(ax+b)(cx+d)=acx2+(ad+bc)x+bd
(6)(a+b)=a3+3a2b+3ab2+b3
(7)(a-b)=a3-3a2b+3ab2-b3
(8)(a+b+c)2=a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca
因数分解:与えられた整式をいくつかの整式の積の形に表すことです。例えば、(x+1)(x+2)を展開すると、x+3x+2になりますが、逆にx+3x+2を(x+1)(x+2)のような積の形にすることを因数分解と言い、x+1やx+2をx+3x+2の因数と言います。
(1) a2+2ab+b2=(a+b)2
(2) a2-2ab+b2=(a-b)2
(3) a2-b2=(a+b)(a-b)
(4) x2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)
(5) acx2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)
(6) a3+3a2b+3ab2+b3=(a+b)3
(7) a3-3a2b+3ab2-b3=(a-b)3
(8)(a+b+c)2=a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca
素数:2,3,5,7,…のように1とその数の他に約数がない自然数のことです。ただし、1は素数ではありません。
素因数分解:素数である因数を素因数と言い、自然数を素因数の積の形で表すことを素因数分解と言います。
(例)90=2×32×5 108=22×33
①「90と108の最大公約数は?」→各因数の共通部分だけ取って、2×32=18となります。
②「90と108の最小公倍数は?」→各因数を全て取って、22×33×5=540となります。
③「90の約数の数は?」→素因数の組み合わせですから、2は20と21の2通り、3は30,31,32の3通り、5は50と51の2通りですから、2×3×2=12通りとなります。実際に数えてみても、90の約数は1,2,3,5,6,9,10,15,18,30,45,90の12個となっています。
「108の約数の数は?」→2は20,21,22の3通り、3は30,31,32,33の4通りなので、3×4=12通りです。実際に数えてみても、108の約数は1,2,3,4,6,9,12,18,27,36,54,108の12個となっています。
④「90の約数を全部足すといくら?」→素因数の組み合わせを全部足すということですから、分配法則の考え方をうまく使うことができます。(20+21)(30+31+32)(50+51)=(1+2)(1+3+9)(1+5)=3×13×6=234となります。実際に計算しても、1+2+3+5+6+9+10+15+18+30+45+90=234となっています。
「108の約数を全部足すといくら?」→(20+21+22)(30+31+32+33)=(1+2+4)(1+3+9+27)=7×40=280となります。実際に計算しても、1+2+3+4+6+9+12+18+27+36+54+108=280となっています。
【乗法公式や因数分解の利用】
乗法公式や因数分解を利用すると、計算が速くなるケースがあります。特に使い勝手がいいのが、やはり(a+b)(a-b)=a2-b2と(a±b)2=a2±2ab+b2でしょう。例えば、次のような問題を出して、「暗算でやってみて」と言うと、相手は苦労しますが、これをすらすらとやってみせるとびっくりするわけです。
(問題1)「101×99は?」→筆算や計算が得意な人は何とか答えを出してきます。そこで次の質問。
(問題2)「じゃあ、102×98は?」→こうなると、計算が得意な人でも時間がかかります。ところが、乗法公式を知っていると一発です。
101×99=(100+1)(100-1)=1002-1=10000-1=9999
102×98=(100+2)(100-2)=1002-22=10000-4=9996
相手はびっくりしますが、公式にきれいに当てはまって計算しやすい数字を言っているだけなので、すらすらできて当然です。早速、友だちをつかまえて試してみましょう。
さらに次の質問。
(問題3)「95×95は?暗算でやってみて」
ちょっと、やりにくいですね。ですが、公式を使えばこうなります。
95×95=(100-5)2=1002-2×100×5+52=10000-1000+25=9025
これなら何とか頭の中でできそうですね。
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