数学が苦手な人、数学にトラウマがある人にとっては、xだのyだのがあちこち出てくる式を見ただけで頭が痛くなってしまいますね。小学校までの「算数」では具体的な計算だけだったのに、中学校以上の「数学」になった途端、こういった「変数」が出てきて、学ぶ者を戸惑わせます。これは2とか3とかといった個別的な数で考えるのではなく、一般的な式を作って計算し、必要に応じてxやyに個々の数を入れていくということになるのですが、これを見ても「算数」の特徴が「個別性」「具体性」にあるのに対し、「数学」の特徴が「一般性」「抽象性」にあることが分かります。実は「算数は得意だったけれど、数学になってだんだん訳が分からなくなってきた!」という人は、「計算」は得意だけど、こういった「概念」(数学的な考え方・発想)を理解することが苦手ということになるのです。
こう言うと、「数学ってやっぱり難しいんだ!」という声が聞こえてきそうですが、「一般法則」「根本原理」を知っておいた方がいろいろなことに応用できるという面があるのです。例えば、中学校受験の「算数」の問題などは大人が解くと、妙に難しく感じます。「つるとかめが合わせて7匹います。その足を全部足すと22本あります。つるとかめのそれぞれの数を求めましょう」といった「つるかめ算」がいい例ですね。「数学」だったらごく普通の公式を使って簡単に解けるのに、そういう便利な道具を一切使わないで小学校の算数で解けというのですから、「えっ、これ連立方程式を立てたら、すぐに解けるのに、それ使っちゃダメなの?」などと言いたくなります。「つるかめ算」では、つるの足は2本、かめの足は4本ですから、全部つるなら足は14本、全部かめなら28本になり、つるを1羽減らしてかめを1匹増やすごとに足は2本ずつ増えるので、22-14=8、8÷2=4となり、つるは7-4=3羽、かめは4匹と計算します。「そんなの、見たらつるの足をかめの足なんて、見間違えるやつなんていないよ!見りゃすぐに分かるじゃん!」と怒る人もいます。
単項式:2x、-3x2、4x2y3のように、数や文字の積として表される式のことです。単項式において掛け合わされている文字の個数をその単項式の次数と言い、数の部分をその係数と言います。
多項式:単項式の和として表される式。その1つ1つの単項式を項と言います。
整式:単項式と多項式を合わせたものです。
定数項:整式の項の中で、文字を含まない項です。
同類項:整式2x2+4x+3x2における2つの項2x2、3x2のように、文字の部分が同じ項を同類項と言います。
整式を整理する:同類項をまとめることを言います。
降べきの順:整式を整理し、項を次数の高いものから順に並べることを降べきの順に整理すると言います。
次数:整理された整式において、最高のものをその整式の次数と言います。また、次数がnの整式をn次式と言います。
等式の性質:A=Bならば、A+C=B+C A-C=B-C AC=BC
=
(ただしC≠0)。ちなみに式の両辺を同じ数で割って、単純な数の式にしていくと計算が楽になります。式の計算がやたら速い人は、こういった計算上の工夫を必ずしているものです。
累乗:xをいくつか掛けたものをxの累乗と言います。Xをn個掛けたものをxのn乗と言い、xnと表わします。この時のnをxnの指数と言います。ただし、x0=1、x-1=
、x-2=
…となります。
指数法則:一般にm、nを正の整数とする時、次の指数法則が成り立ちます。
(1)xm×xn=xm+n
(2)(xm)n=xmn
(3)(xy)n=xnyn
【計算が苦手な天才達】
例えば、ノーベル物理学賞を受賞したアインシュタインは、ベルリンの市電でおつりの計算を間違えて、車掌から「あなたの欠点は算数ができないことですね」と言われたことがあり、いわゆる計算は「苦手」だったようです。ところが、「自分が光と同じ速さで移動したらどうなるか?」などと突拍子もない「発想」をして、壮大な相対性理論の世界を構築したのです。
あるいは、現代数学の礎を築いた大数学者ヒルベルトも、その原論文には無数の「計算間違い」があったことは有名です。ところが、こうした細部の誤りにもかかわらず、最終的には正しい結果を導き出しているのです。「直観」と「想像力」でゴールには最初から到達していたのでしょう。アインシュタインも相対性理論の研究に7年もかけていますが、論文自体はわずか5週間で書き上げています。「計算」は「後付け」ということですね。
【曽呂利新左衛門が見せた指数のすごさ】
豊臣秀吉の家臣の1人にという人がいました。刀鍛冶の名人で、作った刀がさやからそろりと抜けるということで、「」という苗字を与えられたと言います。ある時、秀吉から褒美をもらうことになった曽呂利は、「1日目に米を1粒、2日目に2粒、3日目に4粒と、毎日米粒を倍にして、向こう1か月間いただきたいと存じます」と神妙に答えました。秀吉は「何じゃ、欲のない奴だな」と思いましたが、その願い通り毎日米粒を届けてやったのです。20日過ぎて、家臣があわてて秀吉の所に駆け込み、「大変です。このままだと大変な量になってしまいます!」と訴えました。何と、25日過ぎには1,677万7,216粒(約8俵)になり、30日には5億3,687万912粒(約250俵)になってしまうことが分かったのです。
実は倍々ゲーム(2の累乗)をしていくと、25日目当たりで急カーブに変わり、あとは恐ろしい勢いで増えていって、天文学的数字になっていきます。ビジネスでもこのことを踏まえて、なかなか実績が出ない日々が続いている人に対して、「あなたの25日はやってきましたか?」と励ましたりするのです。
【巨大数と微小数】
10の累乗を使って、巨大な数も微小な数を表わせます。これは単位にも反映されています。これは小学校の頃から苦手になりがちな「単位の変換」に欠かせない知識でもあります。パソコンのビット数などでも見かけますね。
1012=テラ(1兆)。TB(テラバイト)~最近のパソコンではよく見ます。
109=ギガ(10億)。GB(ギガバイト)~USBの容量ではこんな感じですね。また、10億のことをbillion(ビリオン)とも言いますので、billionaire(ビリオネアー)と言えば、「億万長者」(10億ドル≒1,000億円の財産家と考えましょうか)のことですね。
106=メガ(100万)。MG(メガバイト)~最近の情報機器では見かけなくなってきました。「100万」というわけではありませんが、「超~」とか「大~」と言った意味で、メガヒット、メガマック、メガシティ、メガロポリスといった言葉がありますね。また、100万のことをmillion(ミリオン)と言いますので、millionaire(ミリオネアー)と言えば、「百万長者」(100万ドル≒1億円の財産家と考えましょうか)のことですね。ミリオンセラーという言葉もあります。
103=キロ。KB(キロバイト)~いつの時代だったですかね~。1km=1000m(長さ)、1kg=1000g(重さ)。
102=ヘクト。1ha(ヘクタール)=100a(アール)(広さ)、1hPa(ヘクトパスカル)=100Pa(パスカル)(圧力)。
10=デカ。decade(ディケイド)と言えば、「10年」のことです。
10-1=デシ(10分の1)。1L(リットル)=10dL(デシリットル)(体積)。
10-2=センチ(100分の1)。1m(メートル)=100cm(センチメートル)(長さ)。
10-3=ミリ(1000分の1)。1m(メートル)=1,000mm(ミリメートル)(長さ)、1L(リットル)=1,000mL(ミリリットル)(体積)。
10-6=マイクロ(100万分の1)。1μm(マイクロメートル)=100万分の1m(メートル)(長さ)。電波でもマイクロ波という言葉がありますね。
10-9=ナノ(10億分の1)。1nm(ナノメートル)=10億分の1m(メートル)(長さ)。いわゆる「ナノテクノロジー」というものはこのレベルなんですね!
10-12=ピコ(1兆分の1)。1p(ピコメートル)=1兆分の1m(メートル)。そのうち、「ピコテクノロジー」とか出てくるんでしょうか?
ちなみに、「巨大数」で「兆」(1012)の上は「」(1016)という呼び方になり、スーパーコンピュータなどの説明でたまに出て来ますが、古代インド人はさらに「恒河沙」(ガンジス河の砂の数から来ています。1052)、「那由多」(1060)、「不可思議」(1064)、「無量大数」(1068)などというとんでもない数を考えていたようです。人間の想像力はとどまる所を知りません。「微小数」でも、「虚空」(10-20)、「清浄」(10-21)、「涅槃寂静」(10-24)といった呼び方まであります。何かもう「無」に帰してしまいそうです。
【百分率と歩合】
特に100分の1を1%(パーセント)として表わす比率を「百分率」と言います。また、10分の1を1割、100分の1を1分、1,000分の1を1厘として表す比率を「歩合」と言います。野球の打率などで、よく「3割2分5厘」と言ったりしますね。これも計算でよく混乱が生じる所です。
1=100%=10割。
0.5=50%=5割。
0.1=10%=1割=10分。
0.01=1%=1分=10厘。
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