数学力アップ講座

3、実数

「小数」の中で「有理数」の範囲に収まらないもの、それが「循環しない無限小数」ですが、これを「無理数」(irrational number)と言います。そして、「有理数」と「無理数」を合わせて「実数」(real number)という概念が生まれて来ました。こうして見ると、何だか「有理数」には「道理」があって、「無理数」には「無理」があるかのようですが、「比で表わされる数」「比では表わされない数」ということですから、「有比数」「無比数」と言ってもいいぐらいでしょう。

例えば、2乗する(2回同じ数を掛ける)と2になる数を2の「平方根」と言い、その正の数の方を 2 (ルート2)と表します。この 2 を小数で表すと1.4142・・・と無限に続き、同じ数が繰り返し現われるわけでもないので、分数の形で表すことはできません。その存在は古代ギリシア時代から知られており、図形や測量術などでは欠かせないものです。実際、三角形を扱えば、直角三角形の辺の比の中で 2 3 が頻繁に出てきます。あるいは「円」においても、「円周」を「直径」で割れば「円周率」πが出ますが、これも「超越数」(transcendental number、いわゆる「方程式」の解にならない実数、代数的数でない実数)と呼ばれる「無理数」です。これも円を扱う上で欠かせない数と言えます。そもそも図形の中で最も基本的なものは「円」と「三角形」ですから、「測量術」から発達した「幾何学」でもこうした「無理数」を「数の体系」の中に組み込まざるを得なかったのです。
かくして、有限小数でも循環小数でもない、循環しない無限小数である「無理数」と分数の形で表される「有理数」と無理数を合わせて「実数」となるわけですが、これらは全て1本の数直線上に表すことができます。逆に言えば、実数とは「数直線上の全ての数」と言ってもいいでしょう。何でもビジュアルに表現できると途端に分かりやすくなりますね。数学では特にそうです。こうして、「現実的な数」が全て網羅され、「数直線」は「連続体」として完結しました。


無理数: 2 やπのように循環しない無限小数で表される数です。無理数は(a、bは整数)という形では表せません。次の3つの無理数は計算でもよく出てくるので、小数点第二位まで覚えておくと、便利でしょう。
2 =1.41421356・・・(一夜に・・・)
3 =1.7320508・・・(人並みにおごれや・・・)
π=3.141592653589793・・・(身一つ世一つくに無意味、いわく泣く身・・・)
実数:有理数と無理数を合わせたものです。


数直線:直線上に原点Oを取り、Oの右に点Eを定めます。そして、線分OEの長さを1として、Oから右に2の距離にある点には点2を対応させ、Oから左に2の距離にある点には数-2を対応させます。このように各点にそれぞれ1つの実数を対応させる時、この直線を数直線と言います。原点Oは0に対応し、点Eは1に対応します。数直線上の点Aに対応する実数aを点Aの座標と言います。Aの座標がaであることをA(a)と表わします。実数aに対して、aを座標とする数直線上の点がただ1つ定まり、実数は全て数直線上の点として表されます。


【数の大小】
数直線上では右にあるほど大きい数で、左にあるほど小さい数です。正の数では特に問題はありませんが、負の数の場合、例えば-5と-3では-3の方が大きい数となりますので、気をつけましょう。これを不等号を使って、-5<-3と表します。5と3では5の方が大きいので、ついつい-5と-3でも-5の方が大きいように思えてしまうのです。


【絶対値】
実数aに対して数直線上に点A(a)を取った時、原点Oから点A(a)までの距離OAをaの絶対値と言い、|a|で表します。絶対値の中が正の数ならそのまま絶対値を外し、絶対値の中が負の数なら-(マイナス)をかけて外すと覚えましょう。例えば、|2|=2、|-2|=2となります。


【実数の上の数は?】
 自然数→整数→有理数→実数と来ましたが、「これより上があるのか?」と言えば、実数に虚数を加えた「複素数」なるものがあります。これは高校で学ぶ内容なのですが、虚数は負の数以上に厄介です。負の数ならまだ借金とか、反対方向への移動という感じでイメージすることもできますが、何しろ虚数というのは2乗すると-1になる数を虚数単位iとして表わすのです。2乗すると負の数になる数(i=-1)なんて、どうイメージすればいいのでしょうか。これは数直線上に表現することは不可能です。そして、a+bi(a, bは実数)の形で表わされる数を複素数と言います。つまり、実数はb=0の時の複素数であることが分かります。ここで数の体系としてはいったん区切りがつくので、興味がある人は複素数について調べてみましょう。ひょっとしたら、「数学の花園」にも出くわすかもしれません。